こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表
岩佐孝彦@税理士です。
今年最後のブログです。
今年は兵庫県知事選にて、
「オールドメディア vs SNS」
の戦いと称され、
オールドメディアによる
“偏向報道”
が問題視されました。
『令和7年度税制改正大綱』
に関しても偏向報道が見られます。
企業型DCやiDeCoの改正に関して、
良い面を中心に報道しているからです。
実は今回の所得税に関する改正により、
企業型DCやiDeCo掛金の
月額上限が引上げとなりました。
▼企業年金なしの場合
(ビフォア)月額掛金上限23,000円
(アフター)月額掛金上限62,000円
▼企業型DCのみ加入の場合
(ビフォア)月額掛金上限55,000円
(アフター)月額掛金上限62,000円
この掛金は全額所得控除OK。
社会保険料の節減効果もあり。
政府は2023年から、
「資産運用立国」
を目指すとの方針を掲げており、
上記報道はマスメディアが
大きく報じています。
しかし騙されてはいけません。
「不意打ち的な増税規定が
仕込まれていないかな?」
という目線で、
111ページにわたる大綱に
目を通しましたが、、、、
今年もありました!!
まさに改悪です。。。
会社から退職金を受け取った時、
【過去9年内】
に企業型DCやiDeCoにて
【一時金(=退職所得)】
として受け取っていた場合、
“増税”
となる旨が明記されました。
つまり、
【退職所得控除の重複利用NG】
となったのです。
退職所得はご存知の通り、
日本の税制で最も優遇されており、
【退職所得控除
=デッカイ非課税枠】
が使えます。
具体的には以下の通り。
▼勤続年数(加入年数)20年以下
⇒ 40万円×年数(A)
▼勤続年数(加入年数)20年超
⇒ 800万円+70万円×(A-20年)
25年の勤続(加入)年数であれば、
退職所得控除は1,150万円です。
今回ここにメスが入りました。
企業型DCやiDeCoは、
「次世代型の中小企業の退職金制度」
としても注目を浴びており、
中小企業の従業員が、
60歳以降に企業型DCやiDeCoからの
一時金を
勤務先からの実質退職金として
受け取る場合は、
今回の改正は影響ありません。
しかし、
オーナー経営者が会社から
役員退職金を受け取った場合、
現行では「過去4年内」に
企業型DCやiDeCoから、
一時金を受け取っていれば、
退職所得控除の重複利用が
できませんが、
裏を返せば、
5年経過していればセーフです。
例えば従前は、
60歳でiDeCoから
一時金を受け取った後、
65歳で役員退職金を受け取れば、
不利益は生じませんでした。
つまり、
iDeCo等からの一時金受取時期と、
役員退職金の支給時のタイムラグが、
5年経過していればセーフでしたが、、、
今回の改正により、
10年経過していなければ、
セーフにならない。
そんな規定が入ったのです。
まさに今回の改正は、
▼月額掛金上限を引上げ
⇒ 入口を広くする
▼退職所得控除の重複利用制限
⇒ 出口を狭くする
という改悪です。
報道だけを見ることなく、
出口の対策も
十分練っておいてほしいと思います。
出口対策のヒントだけお伝えすると、
「一時金ではなく、
年金として受け取る」
ということ。
そうすれば退職所得ではなく、
雑所得として受け取れ、
公的年金等控除の対象になります。
今回の増税規定(だけ)を見て、
「企業型DCやiDeCoはオワコン」
と短絡的に捉えないで下さい。
掛金の全額所得控除や、
運用益の非課税のメリットは大きい。
部分最適ではなく、
全体最適の視点を忘れずに。
それでは、良いお年をお迎え下さい。
本年も大変お世話になりました!