こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表
岩佐孝彦@税理士です。
ビッグモーターの再建方針が
ついに正式決定しました。
伊藤忠商事と伊藤忠エネクスが
企業再生ファンドと手を組み、
ビッグモーターの再建へ。
再建計画の肝は【会社分割】。
同社が2分割されます。
伊藤忠商事は新会社を設立。
従業員や中古車販売の優良店舗等の
主要事業を同社より移転させる。
創業家も新会社に一切関与せず。
まさに“いいとこ取り”。
一方、旧会社は訴訟対応や
債務弁済に注力へ。
主力事業が新会社に移転するため、
資金繰りの見通しが将来立たず。
金融機関からも融資支援お断り。
よって、
創業家が100億円程度を注入。
まさに“負の遺産処理”の受け皿。
このように【会社分割】により、
▼新会社(新経営陣)
⇒ 社名変更による
リ・ブランディング
⇒ プラスの資産継承へ
▼旧会社(創業家)
⇒ 過去の不祥事対応に注力
⇒ 創業家の経営責任の明確化
(約100億円の私財投入)
という構図を明確にしたのです。
金融庁からの処分により、
ビッグモーターは保険代理店登録を
取り消されています。
伊藤忠商事は今後、
保険ショップ大手の
ほけんの窓口との連携強化と共に、
既存事業の輸入車販売やレンタカー
とのシナジーを追求する方針だとか。
伊藤忠による再建手腕に注目です。
今回の会社分割による創業家の
資金負担はこれだけでは終わらない?
特に報道はされていませんが、
税負担も生じる可能性があります。
ビッグモーターの今回の会社分割は、
【非適格】
になるため、同社に対し、
▼資産譲渡による譲渡益課税
▼株主に対するみなし配当課税
という税負担が生じるからです。
一定の要件を満たさない。
そんな非適格の場合、
【時価での資産移転】
が原則になります。
本件は“いいとこ取り”で
優良店舗が移転するため、
譲渡益の課税関係が生まれる
可能性が高いです。
ビッグモーターは不祥事に対し、
大きな代償を強いられる形へ。
因果応報かもしれません。
税理士目線で言うならば、
会社分割は同族経営の
中小企業間で行うのがベストです。
同族のグループ法人内で
事業の切り貼りを行いたい。
私共の実績で多いのは、
【経営の効率化】
を追求すべく、
【本業と資産管理の分離】
を図る目的のケースです。
こんなケースこそ、
【会社分割】
が有効と言えるでしょう。
同族グループ法人内であれば、
【適格要件】
を満たすケースが大半です。
適格要件を満たせば、
【無税で資産移転OK】
が税務的に可能です。
日本の事業所の99.7%を占める
中小企業の大半は同族経営です。
同族経営は公私混同など、
いろいろ批判があります。
確かに税理士の立場から言えば、
公私混同は税務調査で問題になる。
注意は必要でしょう。
ただ同族経営は良いと考えています。
同族企業だからこそ、
長期目線で経営することができます。
大企業や非同族企業の場合、
赤字になればトップが交代します。
トップの任期もあります。
(一般的には6年)
長期目線で経営できないのは
当然でしょう。
「すぐに効果は出ないけれど、
お金と手間をかけて、
今これをやろう」
とならないのは当然です。
しかし同族経営なら、
それができます。
経営者として大切なのは、
「正しい決断をすること」
ではありません。
重要なのでもう一度書きます。
経営者として大切なのは、
「正しい決断をすること」
ではありません。
経営者に正しい決断なんて、
絶対にできません。
「正しいか否か」
は後になって初めてわかる。
学校のお勉強と経営は違う。
学校の試験問題には
解答がありますから、
正しいか否かはすぐわかります。
経営の世界では、
実行した結果が出なければ、
正しいか否かは
結局わからないのです。
経営者にとって大切なのは、
「決断をすること」
に尽きます。
“正しい”の形容詞は不要!
決断しなければ、実行できない。
実行できなければ、
時間がいたずらに経過するだけ。
有能な経営者は、
「何が正しいのかわからない。
だから、決断できないんです。」
とは絶対口にしません。
同族経営というのは、
「何のしがらみも無く、
決断力を磨く」
ことができるスタイルと言えます。
税務の世界においても、
会社分割の場合、
【同族経営 = 適格要件】
を満たすため、
税効果を享受できるのです。
だから、
同族経営はやめられない。
今日も社長業を楽しみましょう。