こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表
岩佐孝彦@税理士です。
これまで経営者の間では、
「業績が上がったので、
賃上げを実行する」
という思考回路が主流でした。
しかし人手不足時代の未来では、
「賃上げ ⇒ 先行投資」
の経営マインドを持てるか?
賃上げを先行投資として実行する。
その結果、大きな収益の獲得を狙う。
このような考えを持たなければ、
勇気をもって、
賃上げに踏み込めないでしょう。
あらゆる経営者に対し、
意識改革というか、
思考のバラダイムシフトを
時代が要請しているのです。
さらに“悲報”があります。
勇気と覚悟をもって、
賃上げを敢行したとしても、
「賃上げは万能薬ではない」
という過酷な現実があります。
「賃上げしたから、ハイOK!」
というわけにはいきません。
ニューヨークNo1不動産会社の
創業者の著書である、
『大きなケーキは人にゆずろう』
(ソニーマガジンズ)
バーバラ・コーコラン著
の中にこんな記述があります。
…………………………………………………
昇給は感謝されるが、
その有難みはすぐに忘れられる。
昇給はあっという間に
古いニュースになってしまう。
…………………………………………………
賃上げだけでなく、
▼休日
▼労働時間短縮
▼福利厚生
という複合的な施策が
必要なのです。
コロナが明け、
福利厚生にも変化が見られます。
最近よく見られるのは、
「社員旅行」
の実施です。
賃上げだけで終わらず、
優秀な経営者は福利厚生にも
攻めの姿勢で臨んでいますね。
【1人10万円基準
⇒ 1人10万円を超えると
給与課税】
という都市伝説があります。
ネットでもまことしやかに
掲載されています。
税務調査の場面で
常に指摘を受ける論点であり、
税理士や経営者も
「言われれば仕方ない」
として、
修正申告するケースが
多いようです。
(汗)
確かに過去の判例が存在し、
そうした都市伝説が生まれました。
しかし国税庁の課税方針として、
1人10万円基準が明確に
規定されているわけではない。
下記の国税庁サイトを
どうぞご覧下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm
給与課税しない要件として、
▼期間:4泊5日以内
▼参加人数:全体の50%以上
とありますが、
1人10万円基準の
記載はありませんね。
具体例の記載は
確かに見られますが、
1人10万円を超えると、
自動的に課税される??
こんなことはありません。
「少額不追求の趣旨を
逸脱しないもの」
と認められることとしています。
この表現をどう考えるか?
税務調査の場面で
議論されることが多いのです。
この論点は経済的利益として、
「フリンジベネフィット
= 現金給付以外の給付」
と言われます。
フリンジベネフィットは
社員旅行以外にも、
▼飲み会費用
▼食事支給
▼家賃補助
▼自己啓発費用補助
があります。
しかし、よく考えてみて下さい。
1人10万円基準の都市伝説を
万一鵜呑みにし、
調査官の指摘通りに
「社員の給与課税」
となれば、
担税力の問題が生じます。
社員からすれば、
10万円の現金をもらったわけではない。
にもかかわらず、
経済的利益として給与に認定され、
社員に税金が課せられる?
半数以上の参加が税務上の要件ですが、
若手の社員の中には、
「行きたくもない旅行に
業務命令で無理矢理行かされた」
と感じていた人もいるでしょう。
それでも給与課税なのでしょうか?
社員にとっては理不尽な話です。
経営者の立場に立ってみても、
業務上の必要性を感じ、
チームメンバーの結束力を高めるため
コロナ下で制限されていた
社員旅行を満を持して実施した。
この予算を物価高のご時勢の中でも
敢えて用意した。
にもかかわらず、
税務調査で「高すぎる」と指摘され、
給与課税として修正申告する。
経営者にとっても理不尽な話です。
決して本意ではないでしょう。
賃上げプラスアルファの経営努力に対し、
労使双方に“冷や水”を浴びせられる?
雇用の約7割を支える中小企業にとって、
社員旅行の給与課税問題は、
健全な税務行政のあり方に
禍根が残りかねないと危惧しています。
このお話は次回に続きます。
今日も社長業を楽しみましょう。