こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表
岩佐孝彦@税理士です。
家電量販店最大手のヤマダHD。
今年創業50周年、御年80歳を迎える。
そんな百戦錬磨の山田昇氏の
経営戦略の真骨頂は何か?
【スクラップ・アンド・ビルド】
口で言うのは簡単ですが、
ヤマダ式のそれは凄まじい、、、
2005年には専門量販店として、
日本初の売上1兆円突破。
攻めダルマのごとく、
全国へ出店しまくる。
1店舗出して、月に1000万円儲かると、
とにかく出店する。
営業利益は出店費用に回し、
大型店舗を毎月4~5店ペースで開店。
山田昇氏の考え方は以下の通り。
▼10店舗つくって、6店舗が黒字、
4店舗が赤字なら、
2店舗が差し引き黒字。
▼赤字の4店舗を潰し、
黒字の6店舗を残す。
▼多くの経営者は赤字の4店舗を
何とか黒字化しようとするが、
それは時間の無駄である。
▼1,000万円の黒字店を
1.5倍にすれば、1,500万円になる。
▼でも、1,000万円の赤字店で
1.5倍頑張っても、
せいぜい500万円の赤字に
減らせるだけにすぎない。
▼赤字を黒字にするまでの
費用対効果は極めて悪い。
▼精緻に練って出店しても、
黒字化できないのは、
立地が悪いか、
商圏住民にマッチしないという
構造的な問題あり。
▼だから、黒字店に精力を注ぎ、
赤字店は思い切って潰す。
つまり、山田昇氏は、
「ダメなもの(=赤字)はダメ。
再建しようとするのは時間の無駄。」
と考えているのです。
デービット・アトキンソン氏の
「ダメなもの
(=労働生産性の低い中小企業)
はダメ。淘汰せよ。」
という考え方に相通じます。
複数の事業や店舗展開されている
経営者にとって、
【ヤマダ式
スクラップ・アンド・ビルド】
は大いに参考になるでしょう。
国税庁が2023年に発表した統計によれば、
「赤字法人率 65.3%」
になっています。
3社に2社は、
本体の事業自体が赤字である。
そんな厳しい現実が見えてきます。
ということは、、、
本業自体が赤字の経営者には、
「ダメなものはダメ」
という賢人の知恵を覆すべく、
“並外れたエネルギー&覚悟”
が求められるということです。
ビジネスの世界は厳しいですね。
もしヤマダHDの傘下であれば、
スクラップ対象かも??
実際のところ、
万年赤字の大塚家具を買収。
1年経過後に山田昇氏は、
大塚久美子社長を解任しています。
日本経営合理化協会が生んだ、
『社長の教祖』
の異名を持っていた一倉定氏。
赤字の甘ったれた社長に対し、
チョークを投げつけ、
烈火のごとく叱り飛ばした。
そんな伝説が残っています。
人間誰しもなかなか変わらないし、
変わることができない。
だからこそ、赤字の経営者には、
“ショック療法”
が必要である。
この経営の原理原則を
一倉定氏は熟知していたのか?
ただ長く経営していると、
赤字決算にならざるを得ない。
そんなピンチの時もあります。
人生同様、経営は山あり谷あり。
上り坂・下り坂もあれば、
まさか、もある。
でも、大丈夫です!
捨てる神あれば拾う神あり。
なぜなら、
【2期連続赤字だけ何とか
回避できれば救済措置あり】
という優遇税制があるから。
実は法人法上の規定では、
【欠損金の繰戻還付制度】
があります。
前期の黒字と今期の赤字を
損益通算し、
前期に納付した法人税を
還付できる。
そんな優遇税制です。
コロナ禍の決算では、
この税制が大活躍でした。
税務署には確かに、
「税金は納めるべきもの」
「いったん納めたものは
簡単には返さない」
という官僚的な組織風土あり。
しかし国税の法人税には、
こんな規定があるのです。
また、使い切れない赤字は
翌期以降10年繰越可能です。
例えば、
*今期 700万円(赤字)
*前期 500万円(黒字)
であった場合、
損益通算しても、
200万円の赤字は残ります。
ただ200万円は翌期以降10年間、
繰り越すことができるわけです。
赤字を出しても単年のみで
踏みとどまる。
2期連続はNG。
この経営姿勢が大切です。
万一2期連続赤字となれば、
「ダメなものはダメ」
というように、
山田昇氏からも、
アトキンソン氏からも、
「即刻退場」
を命じられてしまう??
それぐらいの危機感を胸に秘め、
闘争心をもって経営に臨むべし。
以上、心を鬼にして、
厳しいお話をしましたが、、、
どうぞお許し下されば幸いです。
私は税理士としてはもちろん、
同じ中小企業経営者として、
共に勝ち残っていきたい。
そう考えているからです。
2024年に向けて、
「常在戦場」
の気持ちをお互い忘れずに。
(自戒の念を込めて)
今日も社長業を楽しみましょう。