こんにちは、神戸の税理士の岩佐孝彦です。
先日の日経新聞に、消費増税から5か月近くたった今、個人消費の
行方を握る労働者の賃金についての分析コメントが出ていました。
それによれば、
▼名目雇用者報酬 … 4~6月に前年同期比1.3%増
これは働く人すべての賃金総額です。
この数字を見れば、景気分析上プラスに解釈できそうですが…
注意すべきなのは、
【全労働者の賃金総額】よりも【1人当り賃金】の伸びは小さい、
ということ。
例えば、専業主婦が仕事に就くと、他の人の賃金は変わらなくても、
働く人が増えるので労働者全体の賃金総額は増えます。
この現象は中小企業経営においても、盲点となりやすいところです。
マクロ経済を分析する視点とは違い、中小企業経営の場合、
【賃金総額】の伸びより【1人当り平均賃金】の伸びの方が上回るべし、
私はこう考えています。
JALを再建され、今や中小企業経営者のカリスマとして君臨される
稲盛和夫氏の言葉に、
「企業経営の使命は、従業員の物心両面からの幸福の追求」
というものがあります。
しかし、その一方で私たち経営者には本能的に、
▼従業員数が多いほど儲かっていてカッコいい
という幻想があり、簡単にヒトを増やしてしまう悪癖(?)があります。
ここで敢えて“幻想”と表現したのは、従業員数の伸び以上に収益が向上
しなければ意味がないからです。
その会社の真の収益力を見るうえで大切なのは、売上の規模でも社員数でも
ありません。こうした数字は外から見えますが、所詮“表”の数字でしかない。
外からは決して見えない“裏”の数字【1人当り粗利益】がモノサシです。
しかし悲しい現実として、中小企業の1人当り粗利益の平均値は年700万円程度。
こんなレベルでは、経営者が食っていくだけで精一杯で、従業員の物心両面からの
幸福の追求など夢のまた夢…(汗)
私は常日頃より1人当り粗利益1500万円の経営をクライアントに提唱しており、
自分自身が経営する会計事務所でもそれを実現しています。
確かに人件費を増やしたり、人を増やした場合の優遇税制は下記の通り
存在し、近年アベノミクス減税として拡充しています。
▼賃上げ促進税制
⇒ 前期より人件費総額【2%以上】アップ…増加額の10%税額控除
(上限:法人税額の20%)
▼雇用促進税制
⇒ 前期比10%以上&2人以上の増員
⇒ 1人当り40万円の税額控除(上限:法人税額の20%)
ただ労働生産性のアップを無視して、やれ社員の待遇改善だの、やれ増員など
あり得ないということを肝に銘じたいところ。
これは「経営の理」ですからね。
今日も社長業を楽しみましょう!