こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の
岩佐孝彦＠税理士です。
大阪の某中小企業でのお話。
社長は全社員を集めて、口を開いた。
「今から重大発表をします。
わが社を売却します。
お相手は、東京のＡ社。
２０２５年の大阪万博を見据え、
大阪に支店を出したい意向で、
このたび話がまとまりました。
わが社はＡ社の傘下に
今後入ります。
皆さんの雇用条件は
特に変わりません。
よろしくお願いします。」
激震が社内に走る。
この重大発表を聞き、
多くの社員はこう思ったとか。
「社長に裏切られた…」
実は、
この会社には後継者候補として、
社長の長男が入社していた。
しかし、
社長と長男の親子喧嘩が勃発。
「俺はこの会社の後は継がない！」
長男は４年前に退職へ。
それ以来、社員の皆が
「うちの会社の後継者が
将来誰になるのか？」
と不安に思っていた。
結果、
社長が選んだ事業承継は、
「自社を他社に売却」
することだった。
Ｍ＆Ａ交渉は水面下で行われた。
顧問税理士の助言もあり、
条件面は以下の内容で決定。
▼Ｍ＆Ａの役員退職金スキーム
の実行
全社員に対する重大発表後のこと。
ずっと社員に秘密裡で動いていた
重圧から解放されたのか、
社長は古参社員にこう呟いた。
「顧問税理士のＣ先生には
本当に感謝だよ。
どう交渉すれば、
有利にお金が残せるかを
助言してくれたんだ。
お陰で、
俺の老後資金設計は万全だ。
嫁も安心してくれているよ。」
社長のこの言葉は、
社内で噂となって一気に広がった。
「なあんだ。
わが社の経営理念は、
“社員の物心両面の幸福の追求”
と言ったところで単なるお題目だ。
うちの社長は結局、
“自分の老後資金”
のことしか
考えていなかったんだな。」
Ａ社の傘下に入り、
社内の空気は大きく変わった。
社内システムが大きく変わる。
結果、サービスの低下を招き、
取引先との契約解除が続出。
社長の経営理念や顧客志向に惹かれ、
働いてきた社員は次々と退職。
残ったのは、
高年収の５０代の古参社員のみ。
そんな古参社員にもリストラのため、
上層部からついに退職勧奨へ。
しかし、
人出不足時代といっても、
５０代の古参社員の再就職は難航へ。
：
：
：
いやあ、身につまされますが、、
（汗）
上記はフィクションです。
しかし、Ｍ＆Ａ実務では、
よくあるパターンのお話です。
実際のところ、Ｍ＆Ａ案件にて、
「売り手の従業員インタビュー
＝ 労務ＤＤ」
の中でよく聞かれる内容です。
中小Ｍ＆Ａは極めて特殊な取引です。
▼売買当事者が
意思決定権者であるため、
判断は主観的になりがち。
▼論理性よりも感情が
優先することが多い。
▼評価額が多種多様であり、
相対取引の個別性が強い。
▼厳格な守秘性が要求される。
▼相手方の素性に注意を払う
必要性が高い。
しかし、
Ｍ＆Ａにおいても
「近江商人の三方よし」
の精神を忘れてはいけません。
商売において、
売り手と買い手が満足するのは
当然のこと。
社会に貢献できてこそ、
良い商売といえる。
▼売り手よし
▼買い手よし
▼世間よし
これが「三方よし」ですね。
中小Ｍ＆Ａに置き変えれば、
▼売り手の経営者よし
▼買い手の経営者よし
▼売り手の従業員よし
の「三方よし」です。
売り手の経営者からすれば、
「社長に裏切られた」
「社長は結局、
自分のカネのことしか
考えていない」
と従業員に最後思われる。
そんなＭ＆Ａの結末では、
真の意味で
「経営者人生の有終の美」
を飾ったとは言えません。
会社を売却さえできれば、
「後は野となれ山となれ」
の姿勢では無責任ですね。
また、
買い手の経営者にとっても、
「せっかく他社を買っても、
従業員の大半が辞めて、
オペレーションが混乱」
「結果、売上減少」
では全く意味がありません。
これも大きな買収リスクです。
「事業発展のため、
会社を買いたい。」
そんな経営者は国策の活用を！
▼経営資源集約化税制
（中小Ｍ＆Ａ税制）
本ブログで既報通り、
令和３年８月２日より施行です。
買収リスクを軽減させるため、
積極的に活用すべし。
今日も社長業を楽しみましょう。
