こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の
岩佐孝彦@税理士です。
顧問先のお客様よりM&Aの相談を受け、
昨日はオンライン面談対応。
会社を買いたい。会社を売りたい。
そんなご相談が本当に増えました。
日経平均株価のように、
上場企業の企業価値は
経済環境で変わります。
また、
「企業の究極の成長の姿=株式上場」
ともいわれます。
ただ仮に、
自分の会社をうまく上場させる
ことができたとしても、
オーナー経営者が
「キャピタルゲインを得る
チャンスは実質1回」
だけです。
つまり、
「上場した時の1回のみ」
なのです。
上場後は経営者自身が保有する
自社株は基本売れません。
もし売れば、、
投資マーケットで
良からぬ噂が出るでしょう。
「この上場企業の経営者が
自社株を売りに出している。
経営者自身が
売りに出すということは、
経営状態が悪く、
将来性がないのかもしれない。」
こんなネガティブ情報が
市場に飛び交い、
株価は大暴落??
よって、
たとえ上場できたとしても、
オーナー経営者自身が
キャピタルゲインを得る。
それが実現できるのは、
上場した時点での
1回だけなのです。
そう考えれば、
上場しなくても、
オーナー経営者は、
「自分の会社を売却」
することで、
キャピタルゲインを
得られます。
例えば、
資本金2000万円の企業を
2億円で売却できれば、
「オッズ10倍」
で上場できたのと同じ。
中小企業のM&A市場が
活発化する中で、
「自分の会社を売却」
するのは、
経営者にとって、
「有効な出口戦略」
になるでしょう。
自分の会社を売却する場合、
一体いくらになるのか?
経営者なら誰しも
気になるところです。
一般的には次の通り。
▼時価純資産(A)+営業権(B)
つまり、
以下の2要素から成り立ちます。
▼(A)時価純資産
▼(B)営業権
(A)の時価純資産とは?
総資産を上場株式同様、
「時価」
で評価し直します。
具体的には以下の通り。
▼リゾート会員権の時価評価
▼保険積立金の時価評価
▼減価償却資産の簿価修正
▼棚卸資産(在庫)の適正評価
▼土地の適正評価
▼役員借入金の実質資本組入
▼簿外債務の追加計上
M&A実務で問題なるのは、
上記のうち、
「棚卸資産(在庫)の適正評価」
が多い。
例えば、粉飾決算をしている。
帳簿上の在庫は
実際よりも少ない。
粉飾決算は確かに
税務署は見て見ぬふりですが、、
M&A交渉においては、
マイナス材料になります。
「この会社の決算書は
全く信用できない。
もっと他に何か
隠していることが
あるんじゃないか?」
そんな疑念を買い手に
与えるのは必至です。
M&A交渉決裂の可能性は
高いでしょう。
時価で資産と負債を
評価し直せば、
簿価よりも
かなり低い金額になる。
こうした例は多く
見られるのです。
次に(B)営業権です。
いわゆる“のれん代”です。
のれん代といっても、
勘違いしないで下さい。
例えば、
社歴百年の老舗企業がある。
しかし近年は万年赤字。
老舗の保守的な体質が仇となり、
大きな経済環境に対応できず、
赤字続きである。
こんな企業はいくら
社歴が古くても、
営業権はゼロです。
また、
高い技術力を有し、
特許を有している。
しかし経営者が技術者思考で
経営感覚が薄い。
よって、近年は万年赤字。
こんな企業も営業権はゼロ。
つまり、
赤字であれば、
営業権はゼロなのです。
一般的には次の式になります。
▼(B)営業権
= 税引後利益×3~5年
このように考えれば、
会社を売りたい経営者は
こう考えるかもしれません。
「営業権を高く評価
してもらうには、
節税対策をあまり行うのは
よくないんじゃないか。
税引後利益がベースなら、
税金をきちんと払って
内部留保を充実させた方が
よいかな。
役員報酬もあまり多く
取らない方がよいかも。」
ただ心配無用!
営業権の算定においても、
「財務DD
(財務デューデリジェンス)」
の場では以下の調整計算あり。
▼役員報酬の修正
▼節税目的の支払保険料の修正
▼過大交際費の修正
など。
上記調整計算により、
決算書上の税引後利益ではなく、
実質利益が最終計算されます。
よって、
節税対策がM&A交渉時に
マイナスにはなりません。
(注)
在庫を過少に計上するのは、
節税ではなく、脱税です。
以上、
M&Aにおける売り手の流儀です。
今日も社長業を楽しみましょう。