こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
半沢直樹の世界が現実に起こった??
コロワイドが大戸屋に仕掛けた
「敵対的買収(TOB)」が先日成立へ。
11月4日の臨時株主総会にて
「経営陣の刷新」
というコロワイドの株主提案の審議へ。
世間で話題になっていますね。
コロワイドは、
▼牛角
▼カルビ大将
▼甘太郎
▼かっぱ寿司
など20を超える外食ブランドを運営。
一方の大戸屋は、
「家庭料理の味」
をコンセプトの定食屋チェーン。
しかし、大戸屋は、
「お家騒動 = 創業家 vs 経営陣」
に陥ってしまいます。
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大戸屋の経営権争いの発端は、
「2015年の創業者の急逝」でした。
創業者の三森久美氏が肺がんで、57歳で死去。
カリスマを失った社内は大混乱へ。
創業家と経営陣との対立が鮮明になりました。
久美氏(創業者)保有の自社株
19%は妻と長男が相続。
自社株の相続税の支払いに、
「4億円」
の資金が不足となる。
創業家は銀行から融資を受け、納税しました。
そこで創業家は、
「相続税の納税資金目的の銀行借入返済」
のため、自社株の売却を考え始める。
昨年10月とのこと。
創業家の持株19%をコロワイドに譲渡へ。
創業家から買い取った19%の保有株をベースに、
コロワイドは大戸屋に敵対的買収を仕掛ける。
持株比率約46%に到達へ。
この結果、TOBが先日成立したのです。
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大戸屋の創業家は結局、
「自社株の相続税対策」
を何もしていなかった??
世間では、そう批判されています。
死去2年前に肺がんが発覚し、
創業者は長男を常務に置いた。
その後、、
対策を何らしていなかった
と報道されています。
しかし、、
長男の三森智仁氏によれば、
真相は以下の通り。
大戸屋は経営者保険を活用し、
「創業者の死亡保険金」
を功労金として遺族に支払う。
それを原資に遺族は、自社株の相続税を支払う。
そんな計画だったようです。
創業家として、
「自社株の保有を守り、株の散逸を防ぐ」
思いはあったとか。
ただこの計画は頓挫します。
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創業者死去に伴う功労金は当初、
「8億円」
と言われていました。
ただ創業者の死から2年後の株主総会にて、
「2億円」
の支給決議がなされる。
結果、、
遺族は相続税の支払いに
窮することになるのです。
なぜ「2億円」に減額されたのか?
経営陣は創業者が手掛けた、
「不採算事業 = 負の遺産」
と位置づけ、
死亡保険金を不採算事業の
撤退資金に回したからです。
智仁氏(長男)によれば、、
不採算事業の中には、
「未来への投資」
の案件も含まれていたとか。
しかし、経営陣は創業者の志を理解せず、
「負の遺産」
として片づけ、整理します。
「創業者の父の理念と違う
ベクトルに進む会社に
自分は居続けるべきでない」
智仁氏はそう判断し、
父が作った会社を去りました。
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大戸屋も当初は創業家から、
「自社株買い(=金庫株化)」
も視野に入れていたようです。
自社株買いをしていれば、
「コロワイドによる敵対的買収」
は起こらなかったでしょう。
しかし、創業者死後の最近5年間は業績悪化。
自社株買いの資金を経営陣は用意できず。
経営陣も創業家に対し、
「第三者への自社株売却」
を容認していました。
それがまさか「敵対的買収」にまで発展し、
「自らの退陣」を求められるとは、
経営陣は当初夢にも思っていなかったでしょう。
納税資金確保のための銀行借入返済に困り、
創業家は第三者に売らざるを得ない状況へ。
創業家を追い込んだのは、
経営陣の失態だった??
ただ真実はわかりません。
しかし、智仁氏の主張を聞く限り、
そんな印象を持ちます。
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智仁氏(長男)は退職後、
現在何をされているのか?
ご自身で起業し、スリーフォレストを立ち上げました。
高齢者施設向けの食事の宅配事業です。
また、何と!!
11月4日の株主総会にて、コロワイドが用意する
「大戸屋の新役員名簿」
にエントリーされています。
なぜ今更、創業家が役員に??
株式をすべて売り払った
創業家がなぜ戻ってくるの??
コロワイドは大戸屋を乗っ取るため、
創業者の息子を利用している??
そんな声も挙がっています。
しかし、コロワイドの思惑は、
「創業者精神の復活」
だとか。
智仁氏に新役員のオファーの際、
「月1回の取締役会で、お父さんの話をしてほしい」
と言われたとか。
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智仁氏はこれを受け、
取材インタビューでこう言いました。
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私は26年間しか、
父と一緒にいられなかった。
経営者としての父の背中を見たのは、
丸2年しかない。
そんな奴に何がわかる?
こんな声が挙がるだろう。
しかし、
私が2年間みた父の背中は、
26年間見てきた父親としての背中と
ギャップはなかった。
今の大戸屋には、愛が失われている。
愛というのは抽象的な表現だが、
私としては核心だと思っている。
その部分を取り戻すために、
創業家として伝えられることがある。
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こんなコメントを聞くと、
「血は水よりも濃い」
の言葉の重みを感じざるを得ません。
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大戸屋(東証JASDAQ)と違い、
非上場企業でありますが、
▼ジャパネット(創業者:高田明氏)
▼アイリスオーヤマ(創業者:大山健太郎氏)
の両氏は敢えて長男を次期社長へ。
その理由として、
「創業者精神の継承」
を掲げていらっしゃいます。
コロワイドも智仁氏のことを
「ただの二世ではない」
として評価している模様。
かつて大戸屋の役員として、
社内の対立に巻き込まれ、
「創業者のDNA」
を持つ葛藤を経験した。
その後は自分で起業し、社会の厳しさを知っている。
だから、大戸屋の再建のために必要な人材として、
白羽の矢を立てられた。
社外役員の立場であれ、今後の智仁氏の動きに注目です。
今日も社長業を楽しみましょう。