こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
緊急事態宣言が発令されました。
そんな中でタクシー会社の一斉解雇の報道あり。
都内を中心にタクシー事業を展開。
そんなロイヤルリムジングループが700人の整理解雇を決定。
同社は東京五輪で来日する訪日客需要を見込む。
タクシーの台数と運転手の人数を近年大幅に増やしてきました。
しかし、新型コロナで業績が急激に悪化。
例年の5割程度まで落ち込みました。
今月はさらに下がる見通しだったとか。
そこで、今回の突然の一斉解雇へ。
一見すると、不条理に見えるでしょう。
理不尽な経営判断として多くに人の目に映るかもしれません。
しかし、経営者としての苦悩が垣間見えます。
金子社長は今回の苦渋の決断に際し、
以下のコメントを出しておられます。
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社員を家族だと思っており、
社員を守るための策を様々検討した。
社員の健康と安全、生活を守るためには、
失業給付制度を利用する。
このことがベストだと判断した。
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金子社長の判断ポイントは以下の通り。
▼A案:雇用を維持し、1人も解雇しない
*『休業手当』を支給
⇒ 賃金日額の最低60%以上
*国の『雇用調整助成金の特例』申請
⇒『休業手当』の90%補償
▼B案:一斉解雇する
*雇用保険上の『失業等給付』を
社員に受けてもらう。
*自己都合退職は最長3ヶ月の
給付制限があるが、
解雇の場合すぐに給付が受けられる。
(注)最初の7日間の待期除く
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社員にとって、A案が必ずしも良いとは限らない。
B案の方が有利になるのでは??
同社はこう判断したのです。
その根拠は以下の通りです。
▼A案の『休業手当』の計算基礎
⇒ 労働基準法上の【平均賃金】
⇒ 直近(3ヶ月間)の賃金総額÷直近(3ヶ月間)の総日数
⇒ 運転手の給与体系:歩合給と残業
⇒ 直近月の売上は50%減のため歩合給も残業も激減
⇒ 平均賃金(直近3ヶ月ベース)は通常時よりも少額へ
⇒ 結果『休業手当』は低くなる。
▼B案の『失業等給付』の計算基礎
⇒ 雇用保険法上の【賃金日額】
⇒ 直近(6ヶ月間)の賃金総額÷180
⇒ 今から起算すれば、コロナ騒動前の
昨年11~12月の賃金も対象OK
⇒ A案の『休業手当』よりも高くなる。
⇒ 今このタイミングがベスト
以上が今回の一斉解雇の判断根拠です。
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売上が半減している中での判断基準は次の通りでした。
『直近3ヶ月』の休業手当が有利か?
『直近6ヶ月』の失業手当が有利か?
経済変動の大きい今、どの期間を切り取るべきか?
それで有利不利が決まります。
労働基準法と雇用保険法の計算基礎期間の違い。
双方を比較検討し、 精査されたのだと推察されます。
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攻めるよりも退く方が難しい。
そんなふうによく言われます。
引き際を見極める。
これ以上やっても勝てないと冷静に判断する。
これほど難しいことはありません。
同社はいったんタクシー事業を休業。
その間は不動産収入で資金繰りを回す。
所有車はボランティアで、
整備担当者に協力をお願いするそうです。
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金子社長は社員に対し、こんなメッセージを送りました。
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長い人生の中で土砂降りの時もあるものです。
皆さんの職場を完全復旧できるように、
私の人生を賭けて戦います。
完全復旧した暁には今まで以上に、
良い会社を作っていきたい。
そう思っています。
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さぞかし苦渋の決断でいらっしゃったでしょう。
社長の気持ちは社長でしかわからないものです。
ロイヤルリムジングループの
タクシー事業の再開を祈念しております。
今回解雇した社員をいつか、
再雇用できる日が来ればいいですね。
この難局を共に乗り越えていきましょう。