こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
新時代の幕開けを予感させる「祝賀御列の儀」。
皇陛下ご即位に伴うパレードが先日盛大に行われました。
その様子を海外メディアはどう報じたか?
「現場は黒山の人だかりだった。
しかし、整然として乱れがなかった。
何も見えなくても、人々は静かに警察の指示を聞いていた。
そして、前に向かってゆっくり移動していた。」
日本人ならではの礼儀正しさが海外でも評価されています。
▼日本人の根底に流れる武士道
▼権威や目上の人に対しての絶対的な服従の伝統あり
▼細かく厳格な礼儀作法の規則の存在
▼ほぼ単一の民族である
こうした背景が日本人の礼儀正しさを形成している。
海外ではこう分析されています。
これはまさに日本人特有の “強み(= 長所)”
と言えるでしょう。日本人にとって誇れるところです。
:
:
:
経営においても“強み(=長所)を伸ばす”
ことの有用性が説かれています。
故・船井幸雄氏は経営手法として『長所伸展の法則』
を2003年に上梓されました。
しかし、令和の時代に入り、
「強みを伸ばす経営の限界」
を提唱する書籍が出版されています。
『弱点思考の経営』(日経BP社)
私的再生のプロの金子剛史氏の著書です。
この書籍の冒頭にこんな下りがあります。
…………………………………………………
強みさえ伸ばせばいいという能天気な経営も、
経済成長期・人口増加期なら、
どうにか通用したでしょう。
けれど、日本は本格的な人口減少時代に
突入しました。
こうした変化の渦中にあっても、なお、
拡大志向からの意識転換ができていない
会社は驚くほどたくさんあります。
人口減少時代では、大半の市場が縮小しますから、
他社とどこまで差別化するかによって、
勝ち負けが決まるといえます。
ただしそれは、強み以外の部分が同じ、
という大前提に立っている場合です。
経済が右肩上がりの時代では、
多少おおざっぱでも、
ブルドーザーのように組織を動かし、
強みに全勢力を注げば何とかなった。
けれど、低成長の時代では、
弱点を放置することは即、命取りになります。
…………………………………………………
「弱点を潰す綿密な経営」と「強みを伸ばす大胆な経営」
一見すれば、二律背反することを両立させる。
これこそが人口減少時代に勝ち残る条件である。
金子氏はそう説いておられます。
つまり、『弱点思考』とは、
「強みで勝負するには、弱点の克服が先決である」
という考え方なのです。大変興味深い視点です。
今ソフトバンクグループの“弱点”が露呈したのか??
「今回の決算はボロボロでございます」
「真っ赤っかの大赤字」
「これだけの赤字を出したのは創業以来」
孫正義氏が記者会見でこうコメント。
ソフトバンクグループの中間決算が先日発表されました。
★営業損益 155億円の赤字
前年同期の1兆4207億円の営業黒字から大幅に業績が悪化へ。
上記はこれを受けての発言でした。
今回の赤字の最大の要因は、投資先企業の不振です。
この投資先企業はどこか?
シェアハウス「WeWork」です。
孫正義氏が「WeWork」の創業者に惚れ込み、
1兆1130億円もの資金を投入。これが失敗だった??
フィナンシャルタイムズは「WeWork」
の適正な企業価値について、3000億円と見積もっています。
つまり、ソフトバンクは適正な企業価値の
3倍以上の過剰投資をしてしまった。
これが赤字の要因となっています。
:
:
:
これだけの赤字を出せば、法人税の心配はしなくてよい??
普通に考えれば、そうなります。
しかし、同社は黒字決算時でも、
法人税をほとんど払っていなかった?
2018年3月期は純利益1兆円超。それでも、法人税ゼロ。
“孫正義マジック”なのか?
同社は2016年に英国半導体設計大手の
アーム・ホールディングスを買収。買収価額は3兆3000億円。
この株の一部を2018年3月期にグループ内のSVFに対し、
現物出資で譲渡しました。
つまり、アーム社の取得価額よりも時価評価額が低くなり、
税務上1兆4000億円に上る欠損金が発生したのです。
その結果、法人税ゼロ。
簡単にいえば、こんなロジックです。
▼プレミアムで高めに取得
▼時価が低くなった時点で、グループ法人に
安い金額(時価)で譲渡
▼結果として、欠損金の計上へ
つまり、グループ法人内で株を転売し、
法人税をゼロにしていたのです。
:
:
:
国税当局は一連のスキームを問題視。
しかし、「税法上に問題あり」
とはまでは指摘できずに終わる。
一時は国税側も同社の手法に対し、
“伝家の宝刀”
を抜くことを検討したようです。
“伝家の宝刀”とは『法人税法132条』です。
「同族会社の行為計算否認規定」ともいわれています。
この意味するところは以下の通り。
「合法的な取引てあっても、経済的合理性が認められず、
法人税の負担を不当に減少させる行為の場合、
税務当局の権限で否認できる。」
しかし、税務当局は結局“伝家の宝刀”
を抜くことができませんでした。
水面下では、ソフトバンクグループと国税当局で
激しい駆け引きがあったようです。
それでも国税当局としては「経済的合理性がない」
ことを立証するのは厳しいと最終判断したのです。
しかし、国税当局は本件がよほど悔しかったのか?
この後、財務省に相談を持ちかける。
その結果、来年度に税制改正を盛り込むことを
10月に決定しました。
法律自体を改正し、ソフトバンクの
節税策を規制することを決定したのです。
2020年度税制改正大綱にて、
「企業の買収(M&A)に絡んだ節税の防止策を講じる」
方針を固めたとか。
ソフトバンクグループにとって、
赤字決算と言っても、
2018年3月期は節税策に起因するものでした。
しかし、今期の中間決算は完全なる、
“投資判断の失敗”による赤字でした。
過去の失敗からいかに学ぶか? この天才は徳川家康でした。
後に天下人になった家康が生涯に
一度の完敗を喫した合戦あり。
「三方ヶ原の戦い」
1572年、武田信玄は周到な西上作戦を展開。
その道中、信玄は家康の居城を横目に西上し、
徳川の本拠地を衝く姿勢を見せる。
そんな中、家康のもとに次の知らせが入る。
「信玄の軍勢が“一望千里”といわれた
三方ヶ原の台地が尽きるあたり、
祝田といわれる狭所で
大挙して食事をとる。」
重臣達は家康に出陣を自重するように説く。
しかし、当時31歳の家康の脳裏に織田信長が
27歳の時に成し遂げた「桶狭間の奇襲戦」がよぎったのか?
家康は怒りに任せて、出撃命令を出す。
しかし、これこそ信玄の謀略でした。
武田軍は食事などとらず、戦いに有利な高所を占め、
臨戦態勢をとって待ち構えていた。
家康軍は、袋のネズミ。迎撃され、完敗を喫したのです。
:
:
:
家康の非凡さは、ここからです。
多くの成功者が自身の敗北をひた隠し
にしようとしたのとは裏腹に、自画像を描くように命じた。
しかめ面をし、曲げた左足を抱え込み、左手を顎にあてがい、
意気消沈した姿を自画像として敢えて残したのです。
この大敗北を肝に銘じる目的だったと言われています。
:
:
:
時を経て、1600年の“天下分け目の関ヶ原の戦い”
に大敗北の教訓が生かされます。
石田三成率いる西軍は、決戦に備え、
大垣城に本拠を構えていた。
この城は交通の要所にあり、
東軍を迎え撃つには格好の場所。
この時点では、西軍が地の利を得ていたのです。
そこで、家康は大垣城の西軍をおびき出す作戦に出る。
「大垣城を無視し、三成の居城の
佐和山城を落とし、大坂を衝く」
こんな偽情報を西軍陣営に流した。
すると、驚嘆した三成は大垣城を出て、
関ヶ原で東軍を迎え撃つ作戦に変更。
これが勝敗の分かれ目となったのです。
偽情報を流し、城から敵をおびき出す。
これこそ、信玄が三方ヶ原の戦いで、
家康を相手に実践した戦法だったのです。
失敗から学ぶ姿勢を常に持っていた。
だからこそ、天下分け目の大一番に、
「敵に過去やられたことを逆に敵にやり返す」
ことができたのでしょう。
:
:
:
役員退職金や含み損の資産売却などの
特別損失で赤字決算は問題ありません。
しかし、本業の不振で赤字決算になる。
この場合は、徳川家康の精神を学ぶべきでしょう。
銀行から融資を受ける中小企業の場合、
注意すべきは、粉飾決算です。
売掛金や在庫を水増しし、赤字決算を黒字決算にする。
この場合、税務署は何も言いません。
税金を払ってくれているからです。
また、中小企業には上場企業と違い、
会計監査がありません。
こうして当面は粉飾決算でも、やり過ごすことができる。
しかし、これはあくまで一時的な現実逃避にすぎません。
本当は利益が出ていないのに、
背伸びし利益を出して、税金を払う。
結果、本来必要のなかったキャッシュアウトが生まれます。
まさに悪循環です。粉飾決算が長期化する。
こんな事態は回避せねばなりません。
再生の現場では、金融機関が債務免除に
応じてくれるケースがあります。
しかし、過去に粉飾で黒字決算であれば、
繰越欠損金が申告書上に存在しない。
そうなると、債務免除益に対し、
ダイレクトに法人税等がかかります。
よって、税金を払えないばかりに
再生の望みが断ち切られてしまう。
こんなケースも中小企業ではあるようです。
粉飾決算は極論としても…
百点満点の完璧な組織はこの世に存在しません。
どんな組織でも何らかの経営課題は
抱えているものです。
残業ゼロで23年連続で増収増益を
実現させた名経営者がいらっしゃいます。
吉越浩一郎氏(トリンプ元社長)には、
こんな名言があります。
…………………………………………………
会社は成長する限り、問題はなくならない。
…………………………………………………
実質赤字はもちろんのこと、
弱点を潰すことに目を向けるべし。
強みを伸ばすことだけに
目を奪われていてはいけません。
これが令和の時代の下で、経営者に求められているのです。
今日も社長業を楽しみましょう。