こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
日産自動車元会長のゴーン氏の逮捕から、2週間が経過しました。
上場企業の高額な役員報酬に注目が集まっています。
堂々のトップは、平井一夫氏(ソニー会長)。
その額は約15億円。凄い金額です。
中でも目を見張る企業があります。
その名は、ソフトバンクグループ。
平井氏に続き、
▼ロナルド・フィッシャー副会長
▼マルセロ・クラウレ副社長
▼ラジーブ・ミスラ副社長
といった外国人経営者の名が連なっています。
あれ?? ソフトバンクと言えば…
孫正義氏じゃないの??
そう思われる方が多いかもしれません。
孫氏の役員報酬は1億3700万円。100位圏外の402位。
「意外と低いんだな。」
そう思われた方もいるかもしれません。
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ただこれは、あくまで役員報酬のみのお話。
孫氏の凄いところは、
▼株主配当収入 103億1000万円
です。天文学な数字で想像もつかないですが…(汗)
つまり、孫氏の手法はこうです。
外国からプロの経営者を高額の報酬で招聘。
それで、彼らの経営手腕で高収益を実現。
結果、大株主として高額の株主配当を享受する。
敬服の限りです。
12月1日付の日経新聞朝刊一面に
興味深い記事が掲載されていました。
『役員報酬 きしむ日本流』
記事によれば、日本の役員報酬の平均水準は、
海外を大きく下回るとか。
米国の14億円に対し、日本はわずか1.5億円。
ドイツや英国、フランスと比べても、
2~3割の水準にとどまるとか。
『総中流』の時代のなごりなのか??
格差への抵抗感が強く、高額な報酬を避ける経営者が
多いためだそうです。
上場企業においては、
報酬が1億円以上だと個別名の開示が必要になります。
よって、9990万円程度に抑える
ケースも珍しくないとか。
私(岩佐)はこうした現象の背景に
もう一つの存在を感じます。
それは、
▼所得税の最高税率
です。
2015年の税制改正にて、
所得税の最高税率が40%から45%へ。
住民税と合わせると、55%。
(課税所得4000万円超の場合)
これにより日本は、
▼デンマーク
▼スウェーデン
▼ポルトガル
に続き、OECD加盟国4番目の高さ
になりました。
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しかし、日本の企業の99.7%を占める中小企業の場合、
孫正義氏の芸当はマネできません。
私たちが経営者個人で株主配当を取っても、
▼分離課税ではなく、総合課税
⇒ 役員報酬と合算のうえで税金計算
という構造になるため、手取り率はよくなりません。
おまけに、経営者が主宰する組織では、
【法人税法上、損金不算入】
になるだけでなく、株価の上昇を招きます。
つまり、自社株の相続税評価額の高騰を招き、
【自社株の“紙爆弾化”】
を引き起こすことになります。
中小企業が株主配当を出しても、
「法人と個人トータルの税効果はないに等しい」
と言っても、過言ではありません。
医療法人に至っては、配当自体が禁止されています。
なぜなら医療法人は、
▼非営利(医療法第7条)
▼剰余金の配当祭止(医療法第54条)
と規定されているからです。
どう逆立ちしても、
孫正義氏のスキームは実行不可能なのです。
まさに医療法人理事長“包囲網”です。
理事長先生の場合、資産防衛の選択肢は極めて限定されます。
だからこそ、顧問税理士と知恵を絞って頂きたいと思います。
今日も社長業を楽しみましょう。