こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの
岩佐孝彦@税理士です。
先日ご紹介した伊藤雅俊氏の著書『遺す言葉』の中で、
伊藤氏が最も親しく、尊敬する外国人がいらっしゃいました。
その名は、ピーター・ドラッガー氏。
日本で最も人気のある、アメリカを代表する経営学者です。
伊藤氏は同書の中で、
ドラッガー氏をこう評しています。
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ドラッガー先生はGE社のコンサルタント
を長く務めましたが、
当時のGE社を時価総額ナンバーワンの
優良企業に導いて賞賛された経営者を
評価しませんでした。
先生は、M&Aを駆使して、
投資家に利益をもたらし、
ウォール街で脚光を浴びるような
経営者よりも、
規模の大小を問わず、
地道に市場を創造し、
顧客や取引先、従業員を大切にして、
地域社会の発展に貢献する経営者
を評価されました。
(中略)
私はアメリカの著名な経営学者を何人か
知っています。
その中には、切れ味の鋭い理論家や、
頭の良さに舌を巻くような優秀な学者も
少なくありません。
そういう方々は往々にして、
業績を誇り、学界や組織での地位や名誉、
そして収入の向上に熱心な野心家が多い。
しかし、ドラッガー先生は違います。
その人柄だけでなく、
確かな歴史観を持って、
常に社会全体を視野に入れ、
人間一人ひとりを温かい目で見守る、
先生以上に志の高い学者を知りません。
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ドラッガー氏の目には、単に中小企業というモノサシ
だけで評価しないということはなかったのです。
地方の中小企業でも、取り組み内容によっては、
十分評価に値する組織になることができる。
ドラッガー氏はそう元気づけてくれます。
『ドラッガーが教えてくれる
人を活かす経営7つの原則』(村瀬弘介氏著)
の中で、ドラッガー氏は組織の成長として、
以下のように説きました。
▼組織がはじめから、
優秀な人材を採用できることは
極めて少ない。
▼組織文化によって、
メンバーの自律的な学習・成長の欲求
に火をつけよ。
▼組織の強さを決めるものは、
メンバーの持つ知識の卓越性である。
▼メンバーが相互に学び合う場を設け、
学習する組織を実現せよ。
そこで、強い組織&学習する組織を目指す
経営者には以下の助成金がお勧めです。
▼雇用管理制度助成コース 最大72万円
(人材確保等支援助成金)
これは、以下の雇用管理制度を導入し、
いずれか1つの制度を実施する。
▼その1 … 評価・処遇制度
▼その2 … 研修制度
▼その3 … 健康づくり制度
▼その4 … メンター制度
そのうえで、離職率目標を【達成】する。
このような場合に助成されます。
例えば、このようなケースです。
新たな研修制度を導入し、
1人につき10時間以上の教育訓練とする。
(例)社外研修に限る
*新入社員研修
*幹部社員研修
*管理職研修
*マーケティング技能研修
そして、社員数30人の場合、以下の離職率目標
を達成します。
《ビフォア》 計画時離職率 15.0%
《アフター》 評価時離職率 8.0%
これで最大72万円の受給となります。
ただ注意すべき点があります。
上記4つの制度は既存のものではダメ!
新たな制度として導入することが必須!
例えば、
『健康づくり制度』
で考えてみましょう。
法定の年1回の健康診断は、
どの法人でも実施していることでしょう。
ただこの助成金を受けるには、
法定以外の健康診断の実施が必要です。
例えば、
*胃がん検診
*子宮がん検診
*歯周疾患検診
です。
学習する組織に進化する。
ドラッガー氏はそのために、
以下の2つが有効であると説きました。
▼社内読書会
▼成功事例共有会議
社内読書会では、経営や人生の良書を全員で読み合わせ、
学びを深めるというシンプルな会です。
月に1回実施するだけ、社員が著しく成長します。
同じ本を読み、意見を交わすことで、
ベクトルも揃い、相互理解が深まるとか。
当社でも月1回『TFP大学』と銘打って、
一日社内研修を実施しています。
先日の社内読書会では、
『仕事の思想』田坂広志氏著
『JALで学んだミスを防ぐ仕事術』小林宏之氏著
の書籍を使用しました。
ただこの制度では、助成金は得られません。
なぜなら、助成金対象は、Off-JTに限定されるからです。
よって、ドラッガー氏の言う、
2つ目の『成功事例共有会議』を検討して下さい。
その月に素晴らしい成果を上げた者を讃え、
成果がなぜ生まれたかについて、
発表してもらい、分析&共有化します。
成功した人は、誇るべき機会を与えられたこと
になります。
また、成功プロセスを
人に教えられるようにすることで、
自己のノウハウを整理し、ブラッシュアップする
こともできます。
一般的に教える側には、
教わる側の10倍の知識が必要と言われます。
15分社内で講義しようと思うと、
150分は予習が必要になるのです。
このため、人は教える時、自らが最も多くを学び、
成長することができるのです。
私(岩佐)もセミナー講師を務めながら、
ご参加の方以上に学び、成長させて頂いております。
今週も東京、大阪の2回のセミナー講師を務めさせて頂き、
ありがとうございます。
いずれにせよ、このような社内制度を【メンター制度】
として取り入れる。
そうすれば、助成金受給チャンスが生まれます。
会社や配属部署における直属の上司とは別に、
指導&相談役となる先輩をメンターとし、
後輩をサポートする制度にするのです。
教育訓練費が国策で優遇される。
これは、助成金だけの話ではありません。
平成30年度税制改正大綱にて、
所得拡大促進税制が改組されました。
簡単に言えば、
【教育訓練費】
を前年より一定以上アップさせた中小企業に対し、
【税額控除額は10%のプレミアム】
【税額控除の上限は5%のプレミアム】
が受けられるようになります。
(平成30年4月1日以後開始事業年度より)
具体的には、以下の通りです。
▼通常バージョン
*人件費UP率1.5%以上(前期対比)
⇒ 人件費増加額の15%の税額控除
(上限:法人税額の20%)
▼プレミアム措置
イ.人件費UP率2.5%以上(前期対比)
ロ.教育訓練費UP率10%以上(前期対比)
⇒ 人件費増加額の25%の税額控除
(上限:法人税額の25%)
ここで問題となるのは【教育訓練費】の範囲。
どこまでが範囲内なのか?
アウトになるのは、どんな内容なのか?
税効果が得られる【教育訓練費】は以下の通りです。
▼社内研修で外部の講師を招く場合、
支払う報酬(旅費含む)
▼教育訓練のために、
施設や設備を賃借する場合における費用
▼外部研修参加費
▼資格取得や通信講座の受講料
ただし、以下の費用はアウト。
▼自社の役員や使用人が講師となる
場合の費用
▼社内研修で使用するテキストや
書籍購入費用
よって、
ドラッガー氏の言う『社内読書会』などOJTは、
助成金のみならず、
優遇税制の対象外でもあります…(汗)
ただOff-JT(社外研修)は、
税効果も助成金も得られるチャンスあり!
当社も今年度より、
クライアントの皆様の会計帳簿上、
【教育訓練費 = 生きガネ】
として、
戦略的に勘定科目で管理していく体制
を敷いてまいります。
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イチロー選手もまだ引退ではありません。
今シーズン試合でプレーできなくて、
寂しくないか?
そんなマスコミからの質問に対し、
彼はこう答えました。
「これからでしょう。
僕は野球の研究者でいたい。
44歳のアスリートとして、
この先どうなっていくのかを
見てみたい。」
イチロー選手のように、自発的に学び、高め合う。
そんな組織風土をつくることが経営者の使命です。
社員教育に力を入れれば、
助成金&優遇税制のダブルチャンス!
国に対し、
ムダにお金を搾取されながら経営するか?
それとも…
自発的に学び合う組織風土を作り、
国からお金をもらいながら経営するか?
答えは一つですね。
戦後の大衆消費社会を舞台にした
流通革命の寵児の多くがバブルにまみれ、
檜舞台から消えていきました。
ダイエーの中内功氏しかり、
セゾングループの堤清二氏しかり。
ただ伊藤氏はバブル崩壊後もほとんど無傷で
乗り切りました。
そして、今日に至る流通業界における
圧倒的地位を築いたのが、
イトーヨーカドーグループ(現セブン&アイグループ)。
これが“最後の大商人”と言われる所以です。
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世の中は理不尽で不条理なもので、
何が起きてもおかしくなく、
隆盛を究めた企業も、
衰退が始まると、簡単に没落する。
そのことを身近に見てきました。
バブルに踊った企業など、
一時はもてはやされ、
羽振りの良かった企業が
泡沫のように消えていった。
これは自業自得です。
しかし、
古今東西の歴史は不道徳や放漫経営など、
経営の落ち度はなく、
真面目にやっていても、
時代の変化の中で、
企業が繁栄を持続することは、
難しいということを教えてくれます。
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伊藤氏の深いお言葉です。
真面目にやっているだけでは、
企業が繁栄を持続することは難しい。
だからこそ、
日々のルーチン業務に忙殺されることなく、
弛まぬ経営努力が必要なのかもしれません。
今日も社長業を楽しみましょう。