こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。
今日の一冊はコチラ!
『日経トップリーダー「あの会社はなぜ儲かるのか」』2016年7月号(日経PB社)
それでは本日の赤ペンチェックを見てみましょう。
特集:あの会社はなぜ儲かるのか
◆かね徳(珍味メーカー) 東村具徳社長
▼「今や社内の共通言語は貢献利益。取引先ごとの売り上げを覚えていない
ので、取引先の訪問前にパソコンを開いて金額を確かめているくらい。
それほど社員の意識を限界利益に振り向けることで、仕事の仕方が変わりま
した」
具体的には、営業社員が利益を稼ぐ方法を自ら考えるようになったという。
例えば、利益率の低い商品を大量に売るだけでは、さほど限界利益は増えない。
そこで利益率の低い商品を売るときは、利益率の高い商品とセットで勧める
などの工夫を始めた。
▼限界利益を社員全員で日々定点観察することで、13年6月期には黒字を
維持した。急激な円安を克服した体験を通し、東村社長には売り上げを
管理指標にする経営の限界を痛感したという。
「売り上げだけでは、儲かっているのかどうか分からない。商品ごとに
原価計算し、それぞれの限界利益を出すことで初めて、儲かっている理由、
儲かっていない理由を分析できる。企業の状態を正しくつかめる数字を
見極め、全社員でチェックすることが重要だ」
◆エス・エヌ・テー(古紙回収処理業) 篠田峰男社長
▼実は、この戦略を推し進める背景には、篠田社長の財務思考がある。
篠田社長は経営コンサルタントの故・一倉定氏らに師事し、早くから
月次決算を実施。10の指標を算出し、どうすれば経営効率を高められるかと
考え続けてきた。
▼エス・エヌ・テーは社員わずか7人、パートなどを含めても30人ほどの
中小企業である。
「この規模の会社ならば、神経質に数値をチェックしなくても経営できる
のでは」と思う人もいるのではないだろうか。
しかし、その考えは甘い。
ROA(総資産利益率)や流動比率などを毎月チェックするからこそ、儲かる
ビジネスモデルを確立でき、さらなる改良点はないかと、事業をブラッシュ
アップできる。
特に篠田社長が注視しているのは収益性の指標。
粗利益率、営業利益率、経営利益率、純利益率という4つの利益率だ。
◆酒井工業(橋梁メンテナンス業) 中辻浩一社長
▼「多くの会社は言ってみれば『パーセンテージ理論』で仕事を取る。
『1億円の仕事なら、15%の儲けとして1500万円は残るのでうまみが
あるな』と考えるのだ。けれど、終わってみたら、利益がほとんど
なかったというのはよくあること。はっきり言って、経費のシミュ
レーションが甘い」
◆弘輝テック(ハンダ付け装置メーカー) 森永治社長
▼数字で示せるようになったことで、社員にも具体的なことが言える
ようになった。
それが、報告会で社員に強調してみせた「危機感の欠如」「他人任せ
で責任者不在」「外注依存」という3つの問題だった。
危機感の欠如とは、「会社が儲かっているのかどうか、期中には経営
者も社員も誰も把握していなかった」(森社長)ということ。
そのため、営業員の値引き交渉も甘くなりがちだった。
さらに生産が外注依存で品質が安定していなかったから、手直しなどの
コストが大きく、利益は圧迫された。
◆仁張工作所(金属製ロッカー、オフィス家具等製造) 仁張正之社長
▼良い経営者は小心者である。
大企業から中堅・中小企業まで多くの経営者と接してみて感じるのがこれだ。
良い経営者は、現実に起きていることに疑問を持ち、将来には常に不安な
要素があることを忘れない。数値管理はその細心さを一段と研ぎ澄ますものだ。
▼「会計を未来のために使えるものにしよう」と決意したという。
その気持ちの奥にあったのは、「漠然とした不安感」だった。
「月次決算はしていたが、制度が粗くて同じ支出が月によって別の科目に
入っていたりしていた」と仁張社長。
これでは実態が正しくつかめない。毎月の数字がまとまるのも遅かった。
▼在庫や売掛金を減らし、運転資本を絞って資金の回収を早める。
取引先にもできる限り、支払いサイトを短くしてもらうよう依頼する。
一方で99年から毎年、半期、第3四半期、決算のそれぞれのタイミングで
「業績検討会」を開催。前の四半期の状況から、経営計画を達成するために
次に打つ手を議論し、実行するように変えたという。
特集:挨拶定着へ、鉄壁の指南書!
▼東京商工リサーチの友田信男情報本部長は「危ない会社を見分けるポイント
として、幹部社員の退職などと並んで、従業員の挨拶ができているかを必ず
チェックする。
挨拶の有無は会社に入っただけで分かる重要な指標だ」と話す。
挨拶で社員同士のコミュニケーションがよいか、社内の規律が整っているか
まで推測できるという。
◆ヤッホーブルーイング 井手直行社長
▼「最初に誰も聞いてくれなくても、僕は諦めないんです。社長が文化を
変えようなんて言い始めたら、社員の立場で考えれば戸惑うのは当たり前
です。その気持ちを理解して諦めずに待ち続ければ、3年目で成果が出始め
て、4年目くらいから社内の文化になり始める。そういうもんですよ」
▼「僕は社内を明るくする天才だったわけじゃない。苦手だったから、
最初はお通夜みたいな朝礼しかできなかったし、チーム作りの社外研修
にも通った。そんな僕でも社内の文化を変えることができた。
諦めなければその先にバラ色の世界が待っている。諦めなければ誰に
でもできることなんです。」
◆幸南食糧 川西修会長
▼幸南食糧が今も実践する「元気体温計挨拶」だ。
出社時と退社時に、顔を合わせた従業員同士が互いの目を見て体温が
伝わるようにしっかりと握手して挨拶する。
握手をするという動作があり、きちんと挨拶していることが互いに
はっきり確認できる。
しかも、握手を通じて相手の元気さが伝わってくる。
◆ケー・エス・ディー 小林達夫社長
▼ドンドン―。入口近くに設置した直径十数cmの太鼓を外出する社員が
叩くと、着席している社員全員から「行ってらっしゃい!」の声が上がった。
チリンチリン―。今度は、外出から戻ってきた社長がドアに取り付けられた
鐘を鳴らすと、全員が「おかりなさい!」と挨拶した。
▼鐘太鼓を用いた理由は、その音だけで社内が明るくなる上、挨拶の徹底を
確認する「証拠」になるからだ。
「ただ大きな声で挨拶するとだけ決めても、それが徹底できているか基準が
はっきりしない。鐘太鼓の音がしたら挨拶すると決めれば、ルールが守られ
ているかすぐ分かる」(小林社長)。
太鼓を鳴らさず出かけたり、太鼓の音がしたのに挨拶がなかったりしたら、
ルールの徹底を呼び掛ければよい。
▼「鐘太鼓の導入前は入口に立ち、挨拶ができない社員に指摘をしていたが、
お互いに疲れて長続きしない。確認の仕組みを用意してから、挨拶を徹底できる
ようになった」と小林社長は話している。
今日も社長業を楽しみましょう。