こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。
今日の一冊はこちら。
『孫正義社長に学んだ「10倍速」目標達成術』三木雄信(PHPビジネス新書)
それでは本日の赤ペンチェックを見てみましょう。
▼私がずっと間近で見て来た孫社長は、これを持っているから、ゼロからスタートした
ソフトバンクという企業を、わずか30年で年商8兆円を超える規模にまで成長させること
ができたのです。これは他の会社の2倍や3倍どころの速さではありません。
まさに「10倍速」のスピードです。
▼ある時、孫社長からこう聞かれたことがあります。
「君は水の上を歩く方法を知っているか?俺は知っている」
冗談を言っているのかと思いましたが、孫社長はあくまで真顔です。
仕方がないので「どうするんですか?」と聞くと、こんな答えが返ってきました。
「右足が沈む前に、左足を出すんだよ!」
その時は何を言い出すのかと思いましたが、ソフトバンクが辿った軌跡を見れば、
孫社長がそれを本当にやってのけたことがわかります。
コムデックスを買収し、Yahoo!Japanを設立し、ADSL事業を立ち上げ、
日本テレコムを買収し、ボーダフォンを買収し・・・。
こうしていくつもの石に飛び移りながら、片方の足が沈む前にもう片方の足を
サッと出して、水の上を渡りきってしまったのです。
▼勝つ方法はあります。戦うフィールドを変えればいいのです。もっと正確に
言えば、フィールドをできるだけ小さく区切って、自分だけが入れるサイズの
土俵を作ってしまえばいいということ。自分しかいない範囲の中なら、戦わず
してナンバーワンになれます。
▼「ビジネスパーソンとして成功したい」という人なら、社内で高く評価
されている先輩社員を見て「あんなふうになれたらいいな」と憬れたことが
あるのではないでしょうか。
だったら、その人をロールモデルにすればいいのです。
ロールモデルが決まったら、その人のことを調べたり、観察したりしてみましょう。
▼なぜアップルがソフトバンクをパートナーに選んだのか。
それはズバリ、「相手が絶対に組みたいと思うような状況を用意したから」です。
かといって、できもしないことを「できる」と言って大ボラを吹いたとか、
ましてやあやしい条件を提示して裏取引をしたわけではありません。
孫社長がうまいのは、「自分が今持っているものの価値を、いかに大きく見せるか」
という点です。
おそらくiPhoneの交渉でも、「日本の携帯電話の純増ナンバーワンはソフトバンク
です」という点を強調したはずです。
累積販売数ならNTTドコモがナンバーワンですが、アップルはこれから日本で
iPhoneを販売するのですから、過去の実績や既存顧客がどれだけあるかよりも、
「今後売る力が一番あるのはどの会社か」が重要になるわけです。
さらには、「ソフトバンクはアジアのインターネット市場でナンバーワンです」
とも伝えたでしょう。
日本のインターネット業界でYahoo!Japanは圧倒的なナンバーワンですし、
中国には、インターネット通販最大手のタオバオやアリババといったソフトバンクの
グループ企業もあります。
スマートフォンは単なる電話ではなく、インターネットを利用することでその価値を
発揮するツールですから、「アジアのインターネット市場でナンバーワン」という
言葉はiPhoneの販売を任せるうえで大きな強みになります。
たとえ「NTTドコモは日本の携帯電話市場で圧倒的シェアを誇っています」と
聞いても、孫社長の言葉のインパクトにはかなわなかったでしょう。
▼ナンバーワンと組むために、まずは自分がナンバーワンになる。孫社長が
2種類の「ワンバーワン戦略」を同時に実践してみせた典型的な例だと言えます。
▼孫社長の交渉力のすごさは、その場の口のうまさにあるのではありません。
むしろ「勝負は交渉が始まる前に決まっている」というのが、孫社長の考え方でした。
▼「三木、交渉の秘訣を知っているか?」
またしても孫社長から突然の質問です。
「いえ、わかりません」
「それはな『鯉とりまあしゃん』だよ」
私は何のことかわからず「はあ・・・?」と返したのですが、実はその後も
ことあるごとに、孫社長から「鯉とりまあしゃん」について聞かされることになります。
「鯉とりまあしゃん」は、かつて福岡県浮羽郡(今の久留米市)に実在した鯉捕り名人
です。浮羽郡は孫社長の実家に近い場所でもあります。
孫社長によれば、「鯉とりまあしゃん」は次のような方法で鯉を捕るそうです。
まずは数日前から栄養価の高い食事をとり、水中で体温が低下するのを防ぐ準備を
します。そして当日は河原でたき火をして、体をじっくり温めます。
そして裸のまま川に入り、水中に横たわります。
すると、人肌の温かさを求めて鯉が寄ってきます。それをそっと抱き上げて捕獲するのです。
こうして「鯉とりまあしゃん」1メートル近い大物を次々と捕えていたそうです、
これはまさに、孫社長の交渉術そのものです。
本番のずっと前から入念に準備して、相手が自然とこちらへ寄ってくるような状況を
作っておく。あとは腕の中に入ってきたものを抱き上げるのだけなので、特別な
テクニックはいりません。
プレゼンの場での説得力やアピール力が本当の勝負どころではないのです。
▼何か新しいことを始めたいと思ったら、まずは仲間が必要です。
最初に言った通り、どんなに才能がある人でも、一人でできることなどたかが知れている
からです。
裏を返せば、いくら優れたアイデアがあっても、それを実現できる人がいなければ目標を
達成することはできません。
▼孫社長は、ためらわずに人の力を借りました。だからこそ、「資金を作って、自分の
会社を立ち上げる」という目標を最速で実現することができたのです。
今日も社長業を楽しみましょう。