事業承継における【負の遺産】を考える
こんにちは、神戸の税理士の岩佐です。
中小企業の経営者が会社で銀行融資を受けた際の【代表者連帯保証人債務】は、
事業承継の際にも影を落とします。
事業承継の際に後継者に渡すべき【プラスの資産】は次の2つです。
▼社長のイス(代表取締役のポスト)
▼オーナーのイス(自社株の経営支配権)
こうした【権利】の承継だけでなく、【義務】の承継もあります。
いわゆる【マイナスの資産】として、代表者の連帯保証債務があるのです。
現在、私どもでは関西エリアのみならず、首都圏を含め、
複数の事業承継対策プロジェクト案件を推進しております。
中には、最高のシナリオで落ち着いたケースがありました。
今まで先代経営者と後継者のダブルで連帯保証人債務のハンコを押していたが、先代の代表取締役退任に伴い、
後継者一人だけの連帯保証でスムーズに金融機関からOKをもらった。
また、後継者はオーナーファミリーの中で事業リスクを真正面から背負うのは自分一人で十分だという覚悟を
持っている。
他のケースでは、先代経営者が後継者に負の遺産を引き継がせたくないと考えている。
後継者の方も次期社長として経営の舵取りをしていくだけの腹決めがまだできていない。
そこで、先代経営者は金融機関に交渉し、代表者個人保証を外してもらおうと考えた。
しかし、そうは問屋が卸さない。
保証人を外すには、高いハードルの財務基準が待っているからだ。
例えば、無担保・無保証人交渉ができるモノサシとして、以下の4つがある。
▼自己資本比率30%以上
▼損益分岐点比率80%以下
▼従業員一人当り経常利益200万円以上
▼借入返済期間:サービス業3年・流通業5年・製造業7年
上記は簡単にクリアできる数字ではない。
こうしたケースでは、先代経営者を被保険者とし、会社の銀行借入残高に相当する死亡保険金の付いた
生命保険に会社で入っておくべし。先代経営者の年齢にもよるが、一度検討する価値はある。
自分の死と同時に、負の遺産が自動的に消えるシステムを会社のカネで買えるからだ。
人間はリスクそのものに対して恐れを抱くのではない。
リスクに対し、自分が取るべき方法がわからないから、恐れを抱く。
よって、リスクへの対応策さえわかれば、恐れることはないのだ。
「社長業 = 究極のハイリスク請負業」
これが私が常日頃から言っていることですが、
究極のところ、経営者はリスクを取ることを楽しみたいところですね。