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経営センスの論理

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こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。

中学生の息子は野球少年で、硬式野球クラブに所属しています。息子の野球を

見ていて感じるのは、野球は努力だけでは絶対に埋まらないセンスが大切である

ということ。小学生時代から少年野球をやらせていますが、息子が中学生に

なって、センスというものの存在感の大きさをより感じさせられます。

プロ野球選手になる人というのは、元々センスのある人が人並み外れた努力を

した人たちなのでしょう。努力だけでは絶対にどう逆立ちしても無理?

もちろん、我が息子は親のDNAが原因(?)で、プロ野球選手になれるような

センスは決して持ち合わせていません。(笑)

 

でも、この本を読んで、野球だけでなく、経営にもセンスが必要であると知り

ました…(汗)というわけで、本日の一冊はコチラ。

 

 

『経営センスの論理』楠木建著(新潮社)

 

それでは、本日の赤ペンチェックをみてみましょう。

 

▼物語仕立てで説明したりプレゼンテーションした方が、理解しやすいし、

伝わりやすい。ストーリーテリングというのは、ある種のコミュニケーション

技法を意味している。

 

 

▼戦略をより効果的に伝達し、組織内外に浸透させるためのストーリーテリング、

これはこれでリーダーにとって重要なスキルだろう。コミュニケーション以前の

問題として、経営者がそもそも戦略を構想するための思考様式として「ストーリ

ー」が重要になる。

 

 

▼優れた戦略をつくるために一義的に必要なのは何か。それは「センス」としか

言いようがない。スキルとセンスをごっちゃにすると、大体スキルが優先し、

センスは劣後する。スキルであれば定義できるし、測れるし、すぐに他人に示せる

からだ。しかし、本来はスキルであるはずのことをスキルとすり替えてしまうと、

悲惨なことになる。戦略も同じである。本を読んでスキルを身に着けて、それで

うまい戦略が作れたら誰も苦労しない。必要な要素の大半はセンスなのだ。

 

 

▼まずはスキルとセンスを区別して考える必要がある。アナリシス(分析)と

シンセシス(綜合)の区別と言ってもよい。スキルというのは、アナリシス的

発想の産物だ。組織の中で分業が進む。個別の担当分野ごとに担当者がいる。

そうした人々が担当業務を遂行するために必要となるのがスキルだ。

これに対して、戦略の本質はシンセシスにある。スキルをいくら鍛えても、

優れた経営者を育てることはできない。

 

 

▼鋭敏な直感やセンスの根っこをたどると、そこにはその人に固有の好き嫌い

がある。好き嫌いを自分で意識し、好き嫌いにこだわることによって、経営者

として重要なセンスが磨かれるのではないかというのが僕の仮説だ。

会社内での議論や意思決定では、好き嫌いについての話は意識的・無意識的に

避けられる傾向がある。好き嫌いはあくまでも個人の主観だ。会社内で何らか

の判断が必要となった時、好き嫌いで決めてしまえば、意思決定の組織的な

正当性が確保しにくい。客観的な「良し悪し」が前面に出てくるという成り行き

になる。

 

 

▼しかし、実際には優れた会社ほど、好き嫌いのレベルで議論が飛び交っている

ように思う。いわゆる「ノリがいい」会社ほど、好き嫌いについてのコミュニケ

ーションが多い。高度成長期にホンダやソニーといったグローバルブランドが

育った背景にも、会社にとって重要な判断ほど、最後のところで好き嫌いで物事

が決まっていたということがあった。

 

 

▼いきなり良し悪しのモノサシを振りかざすのではなく、ときには「こっちの方が

面白そう」「そういうことは嫌いだからやりたくない」という理由で、物事が判断

されてもいい。センスは好き嫌いで磨かれる。仕事の中で好き嫌いが飛び交う会社

ほど、センスのある経営人材が育つのではないだろうか。

 

 

▼昔の人はよく言ったもので「好きこそものの上手なれ」。好き嫌いの大切さを

裏づける強力な論理である。好きなことでないと、人間は努力を投入できないし、

努力が長続きしない。長期的な努力投入がなければ能力がつかない。能力がなけ

れば、人の役に立てない。顧客に対する価値もつくれないし、競争にも勝てない

だろう。好き嫌いの問題は一見仕事と距離があるように見えるが、実は常に経営

の根幹に横たわっている。

 

 

▼「攻撃は最大の防御なり」とはよく言ったものだ。昔からよく聞く格言では

あるが、その背後にあるロジックは何か。防御の必要性が生じるのは、現時点で

すでに何かに攻め込まれているからだ。そもそも何らかの問題に追い込まれている

とか、何らかの弱みを抱えているということがなければ、防御する必要もない。

こうしたネガティブな状況に追い込まれているときに防御一辺倒になるとどうなる

か。防御にやたらとコストがかかる羽目になる。いったん防御に回ると、キリが

ない。問題の本質が解決されることなく、際限なく防御のコストを払わなければ

ならない状況に追い込まれる。

 

 

▼「攻撃こそ最大の防御なり」戦略の妙味は、コストよりもベネフィットの方が

ずっと大きい。要するに「ピンチはチャンス」というよくある話だが、これを

誤解してはいけない。何かの弱点を抱えて攻め込まれているわけだから、やみくも

に攻撃に出ても意味はない。防御どころか総崩れになりかねない。ダメなものは

ダメなのだ。

 

 

▼制約や弱点を克服しようとせず、積極的に受け入れることによって、自分の競争

優位や劣位についての認識ががらりと変わる。制約なり弱点と思われていたものに

思いがけない機会や強みが潜在していることに気づく。これが新しい次元を切り

拓き、防御を攻撃に転化させる。そこから新しい展開が波状攻撃的に生まれてくる。

ここに「攻撃は最大の防御なり」の本領がある。

 

 

▼経営破たんはクセになる。

「離婚はクセになる」という説がある。それを望む人にとっても、離婚それ自体

はネガティブなイベントだ。しないで済むなら、それに越したことはない。

いざ実行となると、大変なエネルギーを必要とする。少なく見積もって、結婚の

10倍の労力はかかる。全面的にうまくいく結婚生活というのはほとんどない。

どんな結婚でも大小さまざまな問題が起きるのが常だ。最初の離婚はブレーキが

かかる。大変な仕事に見えるからだ。ところが、初心者なら離婚するほどでもない

問題でも、経験者は離婚カードを切りがちになる。一度経験した人は、離婚という

大仕事のノウハウを持っているからだ。経験に基づくノウハウがあれば、2回目

以降の離婚コストは格段に小さくなる。3回目以降は結婚するより楽になるらしい。

式を挙げたり、挨拶状とか出さなくていいからだ?

 

 

▼経営破たんもこれに似ている。喜んで破綻する人はいない。離婚と同じく、

できたら避けたい事態だ。しかし、最初の破綻は大事でも、2回目以降はノウハウ

が使える。同じ倒産にしても、心理的な抵抗は小さくなる。コストの展開パターン

や手続きもわかっている。だから、クセになるのだ。

 

 

▼カネと名誉と力と女。この4つのうち、1つだけ手に入るとしたら、どれを

選びますか? この質問は愚問である。

この4つの選択肢が相互に独立ではないからだ。独立でないどころか、かなり

つながっている。カネを手にすれば、権力も手に入れられる。すると、慈善事業

や寄付をしたりして、名誉も手に入る。そうなれば、放っておいても女が寄って

くる。よって、相互依存関係をじっくりと読み取り、なるべく全部を満たせる

ようなツボを見極めることが大切になる。

 

 

▼会社は誰のものなのかは同じ視点で考えられる。株主のものか、顧客のものか、

従業員のものか。経営者にとって大切なのは「長期利益」という結論になる。

長期にわたって、しっかり儲ける。これが商売の本筋である。銭ゲバというのでは

ない。経営者がこの本筋に沿って考えたり判断したり行動すれば、ICESの各方

面でさまざまな「良いこと」を同時に引き起こしやすくなる。ICESとは、

I(配当もできるし、株価も上がる)・E(税金も払える)・S(税金も払える)

・C(普通の競争があれば、長期利益こそ最も正直な顧客満足の指標である)。

 

 

▼世にはこれだけ多くの会社があることを考えると、相当に高い確率で、「働き

がいのある会社」と「戦略が優れた会社」は重なっていると言える。

戦略は一義的には競争の中で長期利益を獲得するための手段だ。だから「戦略」

というと、ドライというか、殺伐としているというか、「従業員の働き甲斐」

などそっちのけでひたすら利益ぐりぐり追求するものという語感がある。

だから、働き甲斐のある会社と戦略が優れた会社の一致は意外に見えるかも

しれない。しかし、この一致はむしろ当たり前だ。

 

 

▼戦略は「こうなるだろう」という未来予測ではない。「こうしよう」という

ライへの意思が戦略だ。だとしたら、「人間はイメージできないことは絶対に

実行できない」という真実が重みをもってくる。人間は誰しも考えられないこと

は決して実行に移せない。言われてみれば、当たり前の話だが、現実の経営では

この「当たり前のこと」が割とないがしろにされているように思う。

 

 

▼未来への意思を会社で働く人々にヴィヴィットにイメージさせる。

そうした未来への動的イメージが働く人々の頭の中に入っていなければ、会社

は動かない。逆に言えば、「こうしよう」というイメージがしっかりと共有され

ていれば、根拠をもって仕事ができる。毎日の仕事がタフでも、明るく疲れること

ができる。

 

 

▼その点、「数字」にはあまり期待できない。目標や予算や達成を数字で見える

化する。これはもちろん大切なことだが、数字を掲げるだけでは「こうしよう」

という意思が組織で共有されない。数字を掲げて走らせるだけだと、疲れが暗く

なる。だから戦略ストーリーが必要になる。数字より「筋」。これが僕の持論だ。

 

 

▼経営者が骨太の戦略ストーリーを構想し、それを会社全体で共有することは、

「働き甲斐」の最強のドライバーになり得る。「働き甲斐のある会社」と「戦略

が優れた会社」が自然と重なってくるという成り行きだ。

 

 

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授ならではの独自の着眼点は

大変興味深いものがありました。

経営センスは好き嫌いで磨かれる。あまり肩ひじを張らないことですね。

今日も社長業を楽しみましょう。

 

 

 

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