こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表
岩佐孝彦@税理士です。
2025年度予算案の再修正へ。
当初の方針が変更され、
【高額療養費制度】
の自己負担上限額の引上げは、
今年8月実施を見送りとなりました。
▼先月 … 一部は据え置き
▼先週 … 予定通り実施
▼先日 … 引上げ自体を見送り
このように二転三転した
今回の決定プロセスに対し、
夏の参院選の選挙対策との
批判が巷で見られます。
高額療養費制度とは、
1ヶ月間に要した医療費の
自己負担額が、
一定金額を超える場合、
その超えた金額が公的医療保険から
払い戻される制度です。
具体例で考えてみましょう。
▼70歳のオーナー社長
▼標準報酬月額 30万円
▼2025年3月に要した医療費100万円
⇒ 窓口負担 30万円
こうした与件の場合、
詳細の計算式は割愛しますが、
▼高額療養費制度
⇒ 支給額 212,570円
▼自己負担の上限額
⇒ 87,430円
となります。
医療費で今月100万円要しても、
「実際の自己負担額 87,430円」
で収まる制度です。
この自己負担額の上限引上げが
今年は最終的に見送りになった。
結果として、
患者団体の皆様の声が届いたと
考えれば、良かったのでしょう。
高額医療を現在受けておられる
オーナー経営者にとっても朗報です。
高額療養費制度は、
健康保険法に基づきますから、
厚労省の管轄です。
私共は税理士法人と社労士法人を
併設していますが、
領域で区分すると、
以下の通りになります。
▼税金 … 財務省
▼社会保険料 … 厚労省
戦後の政治の歴史は、
【財務省対厚労省】
の抗争の歴史でもありました。
戦後の復興予算を一手に握っていた
財務省(旧大蔵省)は、
中央官庁のトップに
常に君臨してきました。
国民の税金は全部、
自分のところに集めて、
他の省庁たちに対しては、
自分たちに頭を下げた人間に
カネ(予算)を渡していく。
財務省は戦後一貫して、
税金を源泉とした、
巨大な権力を行使してきた。
しかし厚労省は、
それが面白くなかった。
財務省がお金を集めたところで、
公共事業(道路・ダム・港湾建設)
に優先的にカネが流れていき、
福祉は後回しへ。
そこで、
自分たちで財源を確保すべく、
厚労省は社会保険制度に
活路を見い出し、
1961年の医療保険・国民年金に
始まり、
2000年の介護保険まで、
様々な保険制度を作ったのです。
社会保険制度は、
財務省とは直接の関係が無いため、
厚労省は別ポケットで、
自分たちのお金(社会保険料)を
集めることができる。
実際には年金の財源は、
保険料と税金のミックスで、
介護保険の財源の半分は、
税金ですから、
財務省と無関係では無いですが、
別ポケットの財源なのです。
財務省は自分たちの手許の金を
増やそうとして増税する。
厚労省は財務省に負けじと、
国民に負担を課して、
社会保険制度の拡充を図り、
保険料を上げていく。
だから今も現在進行形で、
増税と保険負担増が続いているのです。
官僚が頑張れが頑張るほど、
負担が増える構造です。
人口減少時代の下、
持続的賃上げが中小企業の
至上命題になっています。
賃上げと社会保険料は、
リンクしています。
賃上げすれば基本的に、
社会保険料は上がる構造です。
税金だけでなく、
社会保険料に対しても、
節減努力が必須になっています。
財務省対厚労省の戦いの
構図を知れば、
【税金+社会保険料の一体化】
という、
全体最適の視点が
必須であると理解できるでしょう。
官僚の力学で複雑化する
税制や社会保険制度の中で、
部分最適の視点は、
もはや通用しなくなっています。
今日も社長業を楽しみましょう。