こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト代表
岩佐孝彦@税理士です。
この時期は経営者の誰もが、
「冬の賞与を一体いくら出すべきか?」
で頭を悩ませています。
ただ間違いなく言えるのは、
▼お金を払う側(経営者)
▼お金をもらう側(従業員)
の気持ちのギャップは埋まらない。
これは宿命ですから、
割り切った方が良いでしょう。
必要以上に頭を悩ましても、
自己満足ぐらいの意味しかないかも?
もし不満が出たら、
見直しの対象は社長ではなく、
【仕組み(=制度)】
であるべきです。
そうしなければ、
特定個人の従業員による
“ゴネ得体質”
という悪しき風土に
つながりかねません。
だからといって、
ただ制度を作ればよいという
単純な話ではありません。
評価項目と企業業績の
「原因と結果の法則」
が成立しなければ、
人事評価制度は
崩壊するでしょう。
賞与査定制度を取り入れる
目的は以下の通り。
▼評価制度を通じ、
賞与・賃上げの原資を稼ぐ
(無い袖は振らない)
▼評価制度を通じ、
経営者が社員の人生に
大きなお節介をする
(情意考課による人間教育)
▼この会社ならではの
自己実現&ワクワク未来の
創造を追求する
日本レーザー会長の近藤宣之氏。
『中小企業の新・幸福経営
~社員を生涯大切にして
圧倒的な利益を上げる』
(日本経営合理化協会)
など著書多数。
中小企業庁長官賞の
「日本でいちばん大切に
したい会社」
大賞など表彰実績多数。
そんな名経営者の近藤宣之氏も
社長就任時は倒産寸前に追い込まれる。
どんなに経営努力をしても、
「絶対に黒字にならない
のではないか?」
と思えるほど、
安定経営が難しかったとか。
▼不良債権
▼不良在庫
▼不良設備
▼不良人材
「不良」以外何もない修羅場から、
▼売上3倍
▼自己資本比率10倍
▼純資産28倍
を実現へ。
修羅場を体験したからこそ、
近藤氏が認識したのは、
『会社経営の2つの原理原則』
だとか。
▼原理原則その1
人を大切にする経営の実践こそ、
会社を成長させる、
たった一つの方法である。
▼原理原則その2
人を大切にする経営を
実践するには、
会社を絶対に「赤字」に
してはいけない。
そんな日本レーザー社の
「賞与インセンティブ制度」
を紹介しましょう。
全社で必要な粗利額を
設定したところ、
「営業員1人当たり3000万円」
の粗利額が必要だと判明。
そこで当初は、
年間3000万円の粗利額を
達成した社員には、
▼定額の成果賞与20万円を
一律支給
(未達の営業員:支給ゼロ)
という仕組みを作ったとか。
しかし、この方法は
全社の反発を買ったため、
更に精緻な仕組みを設計へ。
その結果、
▼粗利額の3%を
成果賞与として支給
することにしました。
例えば、
年間粗利額3000万円だった場合、
「粗利額×3%=90万円」
になります。
この90万円を営業員だけでなく、
営業員と技術員で配分します。
実際に粗利益を稼ぐのは、
営業員ですが、
技術員がデモや技術説明を
担当するなど、
チームの支援やサポートが
あるはずです。
そこで、
商談成立に関わった当事者同士で
3%の粗利額を分け合っています。
こうすれば、
直接受注を計上しない技術員にも
インセンティブが付きます。
この制度にした結果、
分配で揉めたケースは
一度もないとか。
粗利額3%の分配割合は、
社長や営業本部長はノータッチで、
「受注を担当した社員自身が
自主的に決定できる」
という画期的なものだそうです。
粗利額が下がれば、
成果賞与の金額は当然減ります。
社員は粗利額が減ることは
自分の実入りに直結しますから、
「値引きしないで売る努力」
を自発的に行うとか。
以上、
“日本でいちばん大切にしたい会社”
の賞与インセンティブ制度です。
近藤宣之氏はこう言います。
▼年功序列でなく、
賞与の査定部分を
貢献度に見合ったものにしないと、
組織の健全な成長を妨げる。
▼貢献度に応じて、
納得できる格差をつける。
その反面、
単純な数字での成果主義は
逆効果となる。
近藤宣之氏の著書の中には、
『社員を「大切にする」から
黒字になる
「甘い」から赤字になる』
(あさ出版)
がありますが、
【社員を大切にする】
という理念を数値化すれば、
【粗利額の3%のインセンティブ】
(当該業務に関係した
複数社員に分配)
(分配基準は社員の裁量)
であると解釈できます。
しかし、それだけではありません。
近藤宣之氏は特別表彰者には、
ポケットマネーで報奨金を支給へ。
なぜ、ポケットマネーなのか?
そんなことをしたら、
会社の損金になりませんが、、、
その理由はズバリこうです。
「社員の給与課税を回避し、
気持ちよく
受け取ってもらうため」
“愛はお金”。
言葉だけでは不十分です。
こうしたやり方の根底に
【社員を大切にする】
という理念が存在するのです。
経営の教科書には決して
書かれていない、
“生きた経営の知恵”
は大変学びになります。
今日も社長業を楽しみましょう。