こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
百戦錬磨の経営者が動き出す。
「経済の千里眼」の異名持つ。
そんな似鳥昭雄氏(ニトリ会長)が、
「攻めの経営姿勢」
を鮮明に打ち出してきました。
ニトリが島忠に対し、
“後出しジャンケン”
で買収に乗り出しました。
島忠はホームセンター(HC)を
関東中心に60店舗展開。
当初は同じHC業界大手の
DCMが島忠に買収を持ちかける。
ほぼ両社で合意の方向へ。
そんな中でニトリが「ちょっと待った!」をかけました。
相思相愛の仲を引き裂く??
まるで結婚式場に乗り込み、
新婦を強奪する男みたい??
(笑)
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この手法がなかなか老獪です。
「ビジネス成長のため、法人を買いたい」
「後継者不在のため、将来法人を売りたい」
法人を買いたい人も、売りたい人も学びになります。
ニトリの島忠への買収戦略が
老獪である根拠は以下の2つです。
▼敵対的なイメージを和らげる
▼買収価格戦略
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順に詳しく見ていきましょう。
ニトリ陣営が考えたのは、
「DCMの発表を受けてからの
カウンターならば、
仮に敵対的になったとしても、
そのイメージは和らげられる。」
というもの。
似鳥会長は記者会見でこう述べました。
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島忠さんは130年間、
日本の家具業界を支えてきた。
50年間家具に携わってきた人間から見ても、
心から尊敬する企業です。
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まさにラブコールを送ったのです。
三顧の礼で相手企業を自社グループに迎い入れる。
そんな思いがにじみ出ています。
そして何より老獪なのは「買収提示の価格戦略」です。
DCMが島忠に対する提示額は、
「1株4200円」
です。
この発表を受け、
「1株5500円」
をニトリは提示しました。
何と、30%の上乗せ提示へ。
「4200円 vs 5500円」
両社の金額は一体どうやって、算出されたのか?
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DCMは第三者評価機関として、
▼SMBC日興証券
▼野村証券
▼ブルータス・コンサルティング
に依頼し、
▼市場株価法
▼類似会社比準法
に基づき「4200円」を算出。
ニトリは大和証券に依頼し、
▼DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
に基づき「5500円」と設定。
当然ながら、
「DCMが追随できないように、一発で仕留める」
目的で勝負してきたのです。
DCMは長期間の事前交渉を経て、友好的TOBを開始。
そのため、
*DD(デューデリジェンス)
を十分行ったとか。
DCM側は日経ビジネスの取材に対し、
「島忠の店舗はかなり手を入れる必要がある。
除却損がかなり出るだろう。
それを考慮すれば、4200円が精いっぱい。」
とコメントしたとか。
しかし、ニトリ側は島忠と協議せず、
TOBを発表したため、
DDが十分にできていません。
よって、ニトリのTOB価格5500円は高すぎる??
そんな声もM&A業界で聞かれるとか。
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M&A市場においては、
「値段はあって無いようなもの」
であることがわかります。
専門機関が算出した価額は、目安に過ぎないのです。
DCMは島忠の「ホームセンター事業」に着目した。
そのうえで専門機関の算出金額の
「ストライクゾーンど真ん中」
を提示価額としたようです。
一方、ニトリは島忠の
「ホームセンター事業とのシナジー効果」
に加え、「不動産価値」を高く評価しました。
似鳥会長の不動産への眼力は、
天才的とも噂されます。
島忠の持つ優良不動産は、
とても魅力的だそうです。
含み益も大いに期待できるとか。
実際のところ、
利益の半分以上はホームセンター事業ではなく、
賃貸用不動産で稼いでいる。
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M&A市場の場合、
適正価額の主な算出方法は以下の通り。
▼時価純資産法
▼DCF法
▼配当還元法
▼市場株価法
▼類似会社比準法
DCMとニトリでは、考え方が異なっています。
DCMは上記の方法にある程度忠実に算出した。
一方、ニトリは上記方法の中で、
「最も高い価額」
を適正価額とした。
ストライクゾーンの高めギリギリ?
いや、審判によれば、ボールの判定かも?
それぐらいの水準の金額を
ニトリは提示したわけです。
ニトリの今回の姿勢から、
▼破格の買収価額はリスクを背負い、
投資をする覚悟の現れ
▼買収価額が「適正価額」より高くても、
買収後に価値を高められれば、将来的に投資回収OK
という側面を学ぶことができます。
今日も社長業を楽しみましょう。