こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
大戸屋の敵対的買収劇から、私たち経営者が学ぶべきは、
「創業者精神の尊さ」
でしょう。
大戸屋は創業者の急逝以後、業績悪化に陥っています。
また、功労金の減額決議も含め、
創業家に対するリスペクトが
経営陣にもう少しあれば、
お家騒動は防げたかもしれません。
大戸屋は上場(東証JASDAQ)しているがゆえに、
『新事業承継税制 = 非上場企業の納税猶予制度』
が構造的に適用不可能でした。
もし適用できていれば、
「相続税の納税資金」
の問題は回避できたでしょう。
(功労金の減額決議に関係なく)
:
:
:
平成30年度の税制改正にて、
「新事業承継税制= 従来要件の大幅緩和」
がなされました。
まず『入口』の緩和は以下の通り。
▼対象株式
(従来)3分の2
(改正)100%
▼相続税の猶予税額
(従来)80%
(改正)100%
▼承継人数
(従来)1対1
(改正)複数 対 複数
:
:
『出口』の緩和として以下の通り。
▼免除規定
(従来)
猶予の途中で減免されたり、
免除されるのは、会社更生など事実上の倒産時
(改正)
業績悪化により、会社の株を譲渡したり、
他の会社に合併で吸収される場合、
その時の株の価値で再計算し、差額を免除
▼要件
(従来)
雇用者数の5年間平均の8割維持
(改正)
上記撤廃
↓
↓
↓
大幅緩和のビフォアアフターで見ると、
経済産業大臣への認定件数は、
明らかに変化が見られます。
▼ビフォア … 620件(平成21年~28年度)
▼アフター … 2,900件(平成30年度)
『入口』も『出口』も緩和へ。
この効果は申請件数を見ても、明らかですね。
:
:
:
以下の2要件を満たす法人は、
『新事業承継税制』の適用を考えるべし。
▼その1 同族の後継者の存在あり
(注)
同族の後継者不在の場合は持株会社形式へ
▼その2 長期の経営ビジョンが見える
(例)百年企業
新事業承継税制のポイントは以下の通り。
▼適用期間
2018年1月1日から
2027年12月31日までの間に、
贈与又は相続若しくは遺贈により
取得する財産に係る贈与税又は相続税
▼運用上の注意点
2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県へ提出要。
:
:
:
コロワイドと大戸屋の敵対的買収の背景には、
両社の経営方針の違いがあります。
「店内調理の大戸屋」vs「セントラルキッチンのコロワイド」
大戸屋の創業以来の強みは「店内調理」です。
セントラルキッチンを持たず、
すべてを店内で調理しています。
これで鮮度や栄養価を保つ。
しかし、、
店内での工数を要し、多くの人員が必要になります。
そこで、コロワイドの経営方針は、
「店内調理を辞め、セントラルキッチンを導入」
というもの。
大戸屋はこれに猛反発。
これが対立の背景にあるとか。
:
:
:
これに対し、智仁氏(長男)はこう語っていいます。
▼守るべきは、店内調理なのか?
or
守るべきは、理念と味なのか?
▼父がやっていた頃は、カット野菜は鮮度も栄養価も落ちた。
しかし現在のセントラルキッチンの加工技術は、
ロジスティックスを含め、イノベーションが起きている。
▼味や価格が変わらないのであれば、
調理工程は変えるべきである。
:
:
:
変えるべきは変え、残すものは残す。
創業者の志半ばの部分をこれから具現化していく。
智仁氏(長男)は二代目としてあるべき素養を
お持ちのように見受けられます。
しかし、
智仁氏(長男)は、世間から奇異な目で見られています。
親父が作った会社の株式を売り払っておきながら、
再び親父の作った会社の役員に戻ってくるから??
しかし、その背景には、
「創業家特有の自社株の相続税問題」
が存在していた。
この事実を忘れてはなりません。
しかし現実は、創業家でないと、
誰も理解してもらえないのです。
これは、
「創業家のプライベートの問題ではなく、
社運を賭けた、組織全体の問題である」
という認識を、
大戸屋の経営陣が持っていたら、
お家騒動は起こらなかったはず。
:
:
:
大戸屋の創業者はカリスマで、
トップダウンの組織風土だったとか。
しかし、創業者を失った後、
大戸屋は迷走していきます。
「創業者精神を残し、永続的発展の道を歩む」
そのためのシステムを
顧問税理士と知恵を絞って下さい。
「新事業承継税制」以外にも、
「持株会社」の方法もあれば、
医療法人理事長であれば、
「MS法人」の方法もあります。
大戸屋のお家騒動から、
「経営者のエクジット戦略」
の重要性を学ぶべし。
今日も社長業を楽しみましょう。