こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
ヨーロッパにも新たな時代の流れか?
英国のEU離脱問題。
2016年6月の国民投票から混迷。
離脱派 vs 残留派。
両派の攻防がありましたが、
ついに離脱が正式に決まりました。
「英国と言われても…
日本人の我々にはピンと来ないなぁ~」
所詮、海の向こうの話でしょ。」
そんなふうに思われた方も
いらっしゃったかもしれませんね。
ただある英国人が日本の中小企業に対し、
以下の提言をし、話題になっています。
▼日本は中小企業の数を今の半分以下に減らすべきである。
▼99%の経営者は要らない。
▼中小企業こそが日本経済の停滞の原因。
▼再浮揚のためには中小企業の淘汰が不可欠だ。
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「中小企業を半減だなんて、暴論だ。」
多くの人はそう思うでしょう。
日本の企業数の99.7%は中小企業です。
国民の雇用の7割を支えています。
こんな提言をする英国人とは一体誰か??
その名は、デビット・アトキンソン氏。
小西美術工芸社(東京都)の社長です。
同社は、300年以上の社歴を持つ老舗。
国宝や重要文化財の修復を手掛けます。
▼旧寛永寺五重塔(東京都)
▼一ノ宮貫前神社(群馬県)
▼宗像大社(福岡県)
▼宇佐神宮(大分県)
▼丹生都比売神社(和歌山県)
▼亀ヶ池八幡宮(神奈川県)
▼鹿島神宮(茨城県)
▼香取神宮(千葉県)
▼上野総社神社(群馬県)
など。
こんな文化財を伝統の技術を駆使し、
修復された実績を有しておられます。
なぜ、こんな日本の老舗企業の社長が、
英国人なのか??
アトキンソン氏は元来、
「伝説の金融アナリスト」
の異名を持つビジネスマンでした。
ゴールドマン・サックス証券でパートナーを歴任。
ゴールドマン・サックス証券を退職した、42歳の時。
同氏は日本の文化に興味を持ち、京都に住みます。
趣味である茶道に没頭したとか。
そんな中、後継者を探していた
小西美術工芸社の先代社長から、
「経営を見てほしい」
と頼まれたそうです。
先代社長は軽井沢の別荘のお隣さんだったとか。
そんなご縁で、2011年に社長就任。
老舗企業の社長に就任したアトキンソン氏。
当初は、会社の内情に驚かされたとか。
経理も在庫管理も“どんぶり勘定”。
職人の4割は、非正規雇用。
そこで、アトキンソン氏は改革を断行。
非正規の職人全員を正社員にし、給料を保証。
技術継承のために若い職人を増やし、設備投資も行う。
その結果、職人の仕事の質と生産性が向上。
過去5年間の利益平均がその前5年間より、
80%以上も伸びたとか。
まさにアトキンソン氏は、
“日本の中小企業の救世主”
の実績を持つのです。
中小企業の経営現場を知り尽くしている。
そんな同氏の結論が以下だったのです。
「日本の未来のために中小企業は半分まで減っていい」
一昔前であれば、確実に炎上した??
しかし、同氏の主張は評判が良い。
『国運の分岐点
中小企業改革で再び輝くか、
中国の属国になるか』
(講談社)
昨年9月の発刊依頼、同氏の著書は3万部を突破。
ネット書店のレビューを見ると、批判もある一方、
「日本人の多くが目をそらしたがる
問題にメスを入れてくれた。」
「この国の真の病根にたどり着いた。」
「中小の99%は確かにいらない。
うちが潰れても、誰も困らない。」
「中小は大企業にとって、
都合の良いだけの存在にすぎない。」
「安く作って短期で仕上げるだけでしか、
能がない。」
と自虐的なコメントも見られるとか。
経済協力開発機構(OECD)は、2年に1度の
「対日経済審査報告書」
でこう提言しています。
▼高水準の公的支援は資源配分を歪めた。
▼そして、本来生き残れないはずの中小企業を市場に残した。
▼結果、改革を遅らせている。
国際機関はこのように、
「日本の中小企業政策に問題がある。」
という見方をしているのです。
アトキンソン氏も今日の悪の元凶は、
『中小企業基本法(1963年成立)』
にあると言います。
中小企業基本法では、
以下のように中小企業を定義しています。
▼従業員数300人以下(製造業・建設業・運輸業)
▼従業員数100人以下(卸売業・サービス業)
▼従業員数50人以下(小売業)
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この人数が少なすぎる??
アトキンソン氏は上記基準を問題視しています。
そのうえで上記の小さな会社に対し、
手厚い優遇策を施してきた。
これにより、以下の弊害が生まれたとか。
▼小さな会社を成長させないまま
維持する後押しをしてしまった。
▼人口増加の何倍ものスピードで、
50人以下の企業数が増加してきた。
▼このように、中小企業経営者に対し、
不適切なインセンティブを与えた。
▼そのインセンティブ通りに日本経済が動いた。
▼製造業に比べ、サービス業の生産性が低い。
▼業種そのものの性質ではなく、小さな企業の割合が大きい。
▼「規模の経済」の大原則を無視している。
▼そんな法律が『中小企業基本法』だ。
▼1990年代に入り、人口減少が始まった。
▼それにより、この問題が一気に表面化した。
いやあ、私たち中小企業経営者から見れば、
頭が痛いお話です。
我々の50%どころか、99%は要らない?
ぬくぬくと日々経営している
中小企業なんて存在価値はない?
英国人の識者はそう宣告しているのです。
(汗)
このお話は次回に続きます。
今日も社長業を楽しみましょう。