こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
中曽根康弘元首相の訃報が入りました。
101歳の大往生でいらっしゃいました。
「戦後政治の総決算」
中曽根内閣のスローガンでした。
中曽根氏は関東有数の材木問屋「古久松」の
二男として生まれる。
150人の職人、住み込み女中は20人。
敷地は3ヘクタールもあったとか。
その後、東大法学部を卒業後、海軍へ。
昭和16年11月に「台東丸」に乗船。
ボルネオ島のバリクパパンへ向かう。
そこへ、オランダと英国の駆逐艦が突入。
船団の中に取り込まれ、身動きが取れない。
「台東丸」は攻撃され、炎上。
船倉は地獄絵図になり、多数の重傷者。
班長も脚部ほぼ切断の重傷で、戦死した。
この戦いで戦死した仲間達の遺体は、
パリクパパンの海岸で、火葬に付す。
「友を焼く 鉄板を担ぐ 夏の浜
夏の海 敬礼の列の 足に来ぬ」
中曽根氏はこんな俳句を詠んだとか。
当時を振り返り、中曽根氏はこうおっしゃられました。
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彼ら戦死した戦友をはじめ、
一緒にいた2000人は、いわば、
日本社会の前線で一番苦労している。
そんな庶民でした。
美辞麗句でなく、彼らの
“愛国心”
は混じり気のない本物であると
身をもって感じました。
「私の身体の中には国家がある」
と書いたのは、
戦争中の実体験があったからなのです。
この庶民の愛国心がその後、
私に政治家の道を歩ませたのです。
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敬服の限りです。
先人達の“愛国心”があったからこそ、
今日の日本があります。
現代に生きる私たちは、感謝しなければなりません。
しかし、今の日本に対し、
“愛国心”
を全国民が心底から持てるのか?
少し難しいかもしれませんね。
(汗)
今の日本の残念なところとは何か?
世界のトレンドと大きくズレていること。
その顕著な例が『相続税』です。
諸外国が廃止、もしくは減税へ。
しかし、日本だけが2017年に大増税。
まさに世界と逆行しています。
そんな中、富裕層の節税ニーズが高まる中、
そして、何と言っても、先進国で過去に類を見ない、
“少子高齢化”
です。衰退社会へ向かうトレンドなのか?
他国は人口が増えているし、経済成長もしています。
このように経済合理性だけで考えたら、
日本に住むこと自体、
「世界の流れに逆らっている」
ことになるかもしれません。
そんな中、富裕層の節税ニーズが高まり、
近年は金融商品の人気が高まっています。
具体的には以下の通り。
▼コインパーキング事業
▼航空機&船舶のオペレーティングリース
▼仮想通貨のマイニングマシン
▼海外不動産投資
▼コインランドリー事業
▼足場レンタル事業
しかし、上記のうち、
「海外不動産投資」
については節税効果を封鎖へ。
日経新聞11月27日号によれば、
2020年度税制改正大綱に盛り込まれ、
2021年度から所得税に適用方針とか。
この節税手法は以下の通りです。
米国などで高額な中古物件を購入。
その結果、家賃収入を上回る減価償却費を計上し、
赤字を発生させ、損益通算し、所得を圧縮させます。
この背景には、日本と海外との
耐用年数の考え方の違いが存在します。
長期間使える中古物件でも、日本のルールに従えば、
耐用年数が4~9年になる。
本来なら10年以上使える物件の価値を
4年程度でゼロにする際、
書類上は大きな赤字が発生する。
高額な物件ほど節税効果が高くなるのです。
会計検査院が富裕層の多い、
東京都の麹町税務署管内を調べたところ、
延べ337人、39億8千万円の赤字を計上していたとか。
さすがにここまで目立つと、
目をつけられてしまいますね。
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というわけで、まもなく発表予定の
2020年度税制改正大綱にて、
「海外不動産の赤字は、
国内所得との損益通算禁止」
という規定が入る方針です。
2021年度より適用開始です。
十分ご注意下さい。
アパート大家の節税策も封鎖される方針です。
家賃収入には消費税がかからない。
よって、アパート大家は通常、免税事業者になります。
但し、大家にとって仕入に該当する、
アパート建築・取得時に払った消費税を納税額から差し引く、
「仕入税額控除」は受けられません。
そこで、消費税が課税される金の売買を繰り返す。
これにより、家賃収入を上回る売上高を作り出す。
形式上は、大家が本業でなくなる。
その結果、金取引で発生した消費税と共に
アパート建築時の消費税も控除OK。
これで、消費税が還付されるのです。
しかし、2020年度税制改正大綱にて、
こうしたアパート大家の消費税還付策も
受けられなくするとか。
アパートローンについては、
スルガ銀行の不正融資が問題になりました。
よって、税制面でも抜け穴に厳しく対応へ。
そんな姿勢を政府が見せています。
十分ご注意下さい。
消費税率が10%になりましたが、
その前身は中曽根内閣にありました。
1989年の竹下内閣時に消費税導入。
税率は当時3%でした。
しかし実はその前の1987年の中曽根内閣時に、
「売上税」の法案が国会に提出されていました。
これが現在の消費税の原型なのです。
中曽根首相は前年の衆参同日選挙で、
こんな発言をしました。
「国民が反対する大型間接税と称するものは
やりません。
この顔が嘘をつく顔に見えますか?」
それが翌年にまさかの法案提出。
税率も5%と強気な数値でした。
中曽根首相には「嘘つき」と批判が殺到。
結局、中曽根内閣は「売上税」を断念。
小売段階のみの「売上税」は、
その後「消費税」に姿を変えます。
卸売・製造・果ては消費者まで、
広く多段階にわかり課税を行っていく。
これが「消費税」です。
竹下内閣は中曽根内閣時の「売上税」法案を
進化させ、「消費税」を導入したのです。
▼日本 66:34
▼アメリカ 78:22
▼イギリス 57:43
▼ドイツ 54:46
▼フランス 55:45
上記は、2016年度の直間比率です。
つまり、直接税(所得税・法人税)と
間接税(消費税)の比率です。
近年の消費増税により、
日本は世界各国の形に近づきました。
今日の税制の根底には、
中曽根内閣の基本理念があったのです。
中曽根氏を偲んで、ご冥福をお祈りします。