こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
関西電力の金品受領問題。
国会に取り上げられるまでの問題にまで発展へ。
役員ら20人が福井県高浜町の元助役から
約3億2000万円相当の金品を受領。
関電の会長と社長らは辞任へ。
▼現金
▼金貨
▼金杯
▼小判
▼米ドル
▼仕立て券付スーツ
人口1万人の小さな町。
そんな高浜町に“原発マネー”を循環させる。
その結果、高浜町に雇用が生まれ、
人口減少に歯止めがかかった。
森山元助役は地元では、英雄だったとか。
ただ上記金品のほぼ半額相当は、
2018年に返却されました。
ちょうどこの時期に、元助役と関係の深い地元の建設会社に
金沢国税局の税務調査が入ったからです。
役員20人らは課税当局に対して、
「受領した金品は一時的に預かっていただけ」
という答弁になるのか??
いずれにせよ社会的批判は強まっています。
この背景には上記金品が、
【社会通念上の範囲を超える金額】
である事実が存在しています。
例えば、1着50万円のスーツ仕立券。
元助役やエリートサラリーマンにとっては、
儀礼の範囲内だったかもしれません。
しかし、一般庶民目線から見れば、
社会通念の範囲を超えているわけです。
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実は【社会通念上】という言葉は…
非常に曖昧で、解釈が難しい用語です。
ただ税法でよく登場し、税理士泣かせ(?)の領域です。
例えば、税法の条文では以下の通り、規定されています。
▼福利厚生について
会社がその従業員の生活の向上と労働環境
の改善のために支出する費用のうち、
給与課税とならないのは、すべての従業員に公平であり、
【社会通念上】妥当な金額までの費用とする。
▼弔慰金について
従業員や役員が不幸にして亡くなった時等、
会社が遺族に弔慰金を支払う場合、
【社会通念上】相当と認められるものに限り、
所得税および贈与税が課されない。
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では、社会通念上って、具体的にはズバリいくら?
そこまで踏み込んで、税法上は規定されていません。
社会通念上の範囲とは一体いくらなのか??
いくら以内ならセーフで、いくら以上ならアウトなのか?
顧問税理士としっかり相談しましょう。
いずれにせよ、
社会通念を超える範囲の金品を相手に渡せば、
▼給与課税(源泉徴収)
▼贈与税(年110万円超の場合)
といった課税関係が生まれ、
迷惑をかけるリスクが生じます。
せっかくの好意が仇になりかねません。
だからといって、金品を渡した相手が不明では、
『役員賞与』
に税務調査で認定されます。
そうなれば、
▼法人(損金不算入)
▼個人(源泉所得税徴収)
のダブル課税のパンチを受けます。
一つの支出が経費で落ちるどころか、
二重課税のペナルティを受けるのです。
相手に迷惑をかけないようにする究極の心づけの方法は、
経営者自身がポケットマネーで支払うことです。
「おい、ちょっと待てよ。あんたは税理士だろ!?
何か良い方法を考えてよ。
経費で落とせなかったら、意味ないじゃないか。」
そうお叱りを受けるかもしれません。
(汗)
ただ会社を成長させるために、
「トップが自腹を切って、社員に報いる」
という姿勢が大切である。
そう説かれる名経営者がいらっしゃいます。
第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞。
第3回「ホワイト企業賞」。
「人を大切にする経営学会」副会長。
ダイヤモンド社より『ありえないレベルで人を大切にしたら
23年連続黒字になった仕組み』を上梓された著者。
倒産寸前の会社を見事に再建した、近藤宣之氏。
日本レーザーの代表取締役会長でいらっしゃいます。
かつて同社では、社員の頑張りを評価する業績表彰の一環として、
現金で報奨金を支払っていたとか。
すると、税務調査で「源泉徴収しなさい」と指導を受ける。
また、パートには所得税の負担が生じる
103万円の壁がある。
そこで、社員やパートの頑張りを表彰する
商品券や景品については、
「近藤宣之のポケットマネーから支払う」
というルールにしたそうです。
そうすると、もらった社員も給与課税を気にしなくてOK。
近藤氏はこうおっしゃっておられます。
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トップが自腹を切って、社員に報いる。
そんな姿勢が社内の風通しを良くし、
社員の会社に対する忠誠心を育みます。
・享楽にふけるためのお金 = 死に金
・人の成長のために使うお金 = 生き金
私はそう考えていますから、
会社のお金は社員のために使う。
自分のお金も、時には社員のために使う。
それが「お金を活かす方法」だと考えています。
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素晴らしい理念でいらっしゃいますね。
節税はもちろん大切ですが、
こういう姿勢も持ち合わせるべし。
自らの保身だけを考える官僚や役人、
そして、エリートサラリーマン経営者。
彼らには完全に欠落している、
オーナー経営者ならではの崇高な発想です。
心より敬意を表します。
今日も社長業を楽しみましょう。