こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
昨日の日経新聞に興味深い記事が掲載されていました。
2018年度税制改正にて大幅に拡充された新事業承継税制の
利用件数が2,900件に上ったとか。
利用条件が緩和された後1年が経過し、一気に利用が増えている。
そんな内容です。政府の狙い通りに進んでいるようです。
新事業承継税制の具体的内容は、次の通りです。
自社株にかかる贈与税及び相続税の猶予対象が全株式(従来は
3分の2まで)に拡大され、猶予税額も贈与税及び相続税共に
100%(従来は贈与税のみ100%、相続税は80%)になりました。
また、従来は先代経営者から次世代社長への1対1の承継が要件
でしたが、今後は複数人(代表者以外の者も含む)から複数人
(最大3名)への承継もOKとなりました。
その他にも引継ぎ後5年間の要件として、従来は5年平均で雇用
の8割維持などもありましたが、今後は要件が撤廃されました。
以上のように、ダイナミックな改正が行われましたが、
利用も増えているとのことですが、全国すべての中小企業に
容易に適用可能な制度ではありません。
万能とは決して言えないのです。
なぜなら、この制度には以下の通り、運用上の3つの課題が
存在するからです。
① 平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の承継に
限定の10年間の時限立法であること
↓
後継者候補が幼少など、10年以内に承継が完了する
見込みがない場合は適用困難
② 本制度適用の条件として、2023年3月31日までに
特例承継計画を都道府県へ提出する必要があること
↓
2023年3月31日までに事業承継の計画が立てられない場合
は適用困難
③ 本制度適用後において、もし譲渡・合併・解散が行われた
場合、その時点での評価額で再計算され、納付税額が発生する
リスクがあること
↓
後継者へ承継後にM&Aや、経営不振に伴う廃業の可能性が
ある場合は適用困難
以上を考慮すれば、新事業承継税制を適用すべきなのは、
以下の2つの条件を満たす中小企業であると考えられます。
① 百年企業など長期の経営ビジョンが明確に見えること
② 同族の後継者の存在があること
もし上記の2つの条件を満たすのが困難な中小企業の場合、
消去法で考えて、持株会社の方が適していると言えます。
将来どんな経営状況下に置かれても、持株会社の方が
フレキシブルに対応可能であることは間違いありません。
新事業承継税制を使うべきか否か?
十分検討して下さい。
今日も社長業を楽しみましょう。