こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
4月12日付の日本経済新聞朝刊の7面。
下記の2つの記事が奇しくも、並列されていました。
『返戻率50%超は損金算入に制限 節税保険で国税庁』
『都、ふるさと納税離脱 6月以降 制度に反対姿勢示す』
経営者保険もふるさと納税も、節税バブルの終焉か??
6月から両者に規制が入ります。
まず、経営者保険のお話です。
業界内でバレタイン・ショックと言われました。
2月14日より、節税保険の大半が販売停止へ。
この度、今後の経営者保険について、
国税税より課税ルールの見直し案が発表。
その内容は以下の通りです。
▼既契約の課税ルール見直しなし
⇒ 現行の損金算入割合継続OK
▼ピーク時解約返戻率による損金算入割合
*50%以下 ⇒ 全額損金
*50%超70%以下 ⇒ 5分の3損金
*70%超85%以下 ⇒ 5分の2損金
*85%超
・100%-(ピーク時返戻率×0.9)
⇒ 1~10年目
・100%-(ピーク時返戻率×0.7)
⇒ 11年目以降
日経新聞に大手生保会社の社長のコメントが
掲載されていました。
マニュライフ生命保険の吉住社長のコメント。
「税金の繰り延べ効果は大きく低下する。
新しいルールに適応するように、
保険料の体系を見直すとともに、
中小企業の事業承継ニーズに応える
商品を開発していく。」
大同生命保険の工藤社長のコメント。
「経営者保険市場はここ数年、
節税の観点から過度に強調されていた。
ただ今後は国税庁の見直しによって、
節税競争がいったんリセットされ、
死亡や就労不能などの保障機能、
付帯サービスに注力する環境が整う。」
記事によれば、大同生命は4月、
▼災害時の安否確認システム
▼事業承継を目的とした企業価値算定
の2つの付帯サービスを追加。
これにより、差別化を図っていくとのこと。
結果として、同社は売上高は下がるものの、
販売時の費用負担がなくなるため、減収増益が見込まれるとか。
素晴らしいですね。
現在は経営者保険は販売停止状態ですが、
6月以降、販売も再開されそうです。
いずれにせよ、経営者保険が今曲がり角に来ていることは
間違いなさそうです。
経営者保険に対し、当面どのように対応すべきか??
税理士目線から言えば、以下の通り。
▼検査フェーズ
⇒ 既契約のメンテナンスを!
⇒ 解約返戻金のピークについて、
*いつ?
*いくら?
なのかを十分確認しておくべし。
▼処方箋レベル
⇒ ピーク時に解約したキャッシュを
原資にどのように損金を作るのか?
⇒ 出口戦略を明確にしておくべし
まず安心すべき点があります。
既契約への遡及適用は一切なしということ。
あくまで今回の課税ルール変更は、
今後の新契約に関して適用されます。
よって、既契約には何ら実害がありません。
従来の経理処理は今後も踏襲されます。
その点は心配無用です。
むしろ今回の国税庁の対応を見れば、
従前の経営者保険の合理性が証明された形に
なりました。
経営コンサルタント会社として、
日本初の株式上場を果たされた船井幸雄氏。
船井流の有名な言葉があります。
……………………………………………………
過去オール善、現状肯定、全ては必要必然。
過去を否定せず、未来を創る努力に
集中しなさい。
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これは今後の経営者保険へのあるべき対応に
当てはまるのではないでしょうか。
既契約は“お宝保険”です。
現在法人保険に加入されていらっしゃる
経営者の皆様におきましては、
過去のご自身の経営判断に
自信を持って頂いてよいでしょう。
2月に駆け込みで加入された方もいらっしゃいました。
まさに、過去オール善です。
しかし… 問題はこれから!!
これほど税効果の高い経営者保険は、
今後出てこない可能性もあります。
そうなると、安易に解約すべきではありません。
ちょっと業績が落ちたからといって、
あわてて解約に走るのは得策ではない??
従来であれば、万一出口対策が曖昧でも…
ピーク時に解約し、その解約返戻金を
原資に新たな保険に契約する。
そんな“渡り鳥”作戦も可能でした。
しかし、今後の新たな保険の税効果は今のところ不透明。
そうなると、ピークまではよほどのことがない限り、
掛け続けるべきかもしれません。
しかし、ピーク時まで掛け続けたとしても、
問題がすべて解決したわけではありません。
過去オール善と言ってみたところで…
出口戦略がなければ、
単なる課税の繰延べで終わってしまいます。
▼支出時に損金になったものは戻ってきたら益金になる
この原理原則がそのまま適用されるだけです。
「経営は山あり谷あり。一寸先は闇。
とりあえず保険で節税しておこう。
出口対策はまた考えればいいから。」
もうこの論理はこれから通用しません。
鹿島守之助氏(鹿島建設元会長)には、
こんな名言があります。
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「どうにかなる」という考えではなく、
「どうなるか」を研究する。
そして、
「どうするか」
の計画を立てて、実行することだ。
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既契約の出口戦略の設計に際し、上記の視点が必要不可欠。
あなたの法人の個別事情に即した、
出口戦略をかしこく設計して下さい。
そうすれば、正真正銘 “過去オール善”
の境地に達することができるでしょう。
新しい課税ルールは、6月より施行の見通しです。
今すぐ行うべきは、既契約の棚卸ですね。
6月より、ふるさと納税も規制へ。
平成31年度税制改正大綱にて以下が明文化されました。
▼ふるさと納税で税制優遇が受けられる
都道府県または市区町村は以下の通り。
*返戻品の返戻割合を3割以下
*返戻品を地場産品とする
*総務省に申請し、指定を受けた自治体
6月以降は上記の要件を満たす自治体のみ、
寄附金税額控除が受けられます。
高額返戻品が問題となった大阪府泉佐野市
なども現在申請しているそうです。
ふるさと納税の恩恵が受けられるのは、
5月までかもしれません。
ただ高額な返戻品は所得税法上『一時所得』
に該当します。
一時所得には、50万円の特別控除枠があります。
この金額がガイドラインになります。
ふるさと納税による過度な節税に対しても、
国税庁に監視強化の動きが見られます。
十分ご注意下さい。
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矢野博丈氏(ダイソー創業者)には、
こんな名言があります。
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環境が変われば、最適な方法が変わる。
これはもう仕方がない。
けれども、環境が変わっても、
変わらずに役立つものがある。
それが努力だと私は思っている。
他人のノウハウを吸収するより、
自分で努力する力を磨いた方がよほどいい。
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税金対策についても、永遠はありません。
環境は、国税庁の方針により変わります。
大切なのは、時流適応を追求すること。
矢野博丈氏の言葉を借りれば…
▼環境が変わっても、変わらずに役立つもの
= お金を残す自助努力を欠かさないこと
になりますね。
今日も社長業を楽しみましょう。