こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
この一戦に賭ける。イチロー選手はこんな心境だったしょう。
『マリナーズ vs アスレチックス戦』
メジャーリーグ、7年ぶり日本開幕。
東京ドームでの開幕2連戦。
45歳の日本球界の至宝、イチロー選手がスタメン出場へ。
メジャーリーグ野手史上、2番目の高齢記録だとか。
そして、試合後に引退のニュースが…
私(岩佐)は今、イチローロスです。
(泣)
先日の日曜日に神戸三宮のオリックス・バファローズの
ショップに行くと、今回のメジャーリーグ東京開幕シリーズを
記念したイチローグッズが並んでいました。
▼マフラータオル
▼クリアファイル
▼サイン入りフォト
大人買いしちゃいました。
(笑)
「自分の限界を見てから、バットを置きたい」
イチロー選手はかつてこう言いました。
今回の引退発表の裏には、彼のそんな思いがあったのでしょう。
イチロー選手は今回日本に凱旋し、ヒットは出なかったですが、
『有終の美』
を飾りました。
東京ドームのスタンディングオベーションは感動でした。
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経営者のお金の世界では、
『有終の美 = 役員退職金』
でしょう。
日本の税制で最も税効果が高いのは以下の通り。
▼退職所得(所得税法上)
税効果がダントツで高いですね。
役員退職金をいくら取るのか?
経営者には色んな思いがあるでしょう。
「俺(私)は長年ずっと働き続け、
法人をここまで大きくしてきた。
当然それなりの退職金は取りたい。
そういえば、昨年森友学園の問題で、
国税庁長官の佐川氏が引責辞任した時、
退職金4487万円とか言ってたな。
東大卒のエリート官僚かもしれないけど、
俺(私)と一緒にしないでくれよ。
俺(私)は経営者なんだから、
億超えの退職金は取るつもり。
生命保険でちゃんと積み立てているから、
法人でちゃんと払えるよ。
何か、文句ある?? 」
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そのお気持ちは十分理解できますが、
文句を言われる可能性は大いにあります。
課税当局の目はかなり厳しい。
役員退職金を支給すれば、
百発百中でいの一番に調査で見られます。
確かに法人税法34条には、こんな規定があります。
……………………………………………………
不相当に高額な部分の金額として、
政令で定める金額は、
損金の額に算入しない。
……………………………………………………
「そうか。
不相当に高額だと、
やはり否認されるのか…
だったら、高額な退職金は諦めようかな。」
そんな弱気の虫が顔を出すかもしれません。
しかし、よく判例を研究しましょう。
仙台高裁(平成10年4月7日)は、
こんな見解を示しました。
……………………………………………………
功績倍率の【平均値】に基づいて、
算出された相当額については、
類似法人の【平均的な】退職金額
であるということはできるとしても、
それはあくまでも比較的少数の対象を
基礎とした単なる【平均値】である
のにすぎない。
よって、これを超えれば、
直ちにその超過額がすべて過大な退職給与
に当たることになるわけではない。
……………………………………………………
つまり、ど真ん中ストライク(=平均値)
から少しでもずれていたら、すべてボールではない。
ストライクは“点”ではなく、
ゾーンなのです。
類似法人の平均値を超えているだけで、
差額はすべて不相当に高額とは言えない。
税法でいう“不相当に高額”とは、
相当レベルで超えていることを意味する。
判例の中で、こんなガイドラインが示されています。
イチロー選手はこう言います。
……………………………………………………
準備というのは、
言い訳の材料となり得るものを
排除していく。
そのために、
考え得るすべてのことをこなしていく。
……………………………………………………
イチロー選手が日本人プレイヤーとして、
有終の美を飾るべく、本番前の準備をし、戦いに臨む。
それと同様、私たち経営者も、
有終の美を飾るべく、
役員退職金の否認リスクを回避するため、
判例の情報武装を通じ、
しっかり準備をし、来るべき税務調査に臨む。
イチロー選手のエネルギーを拝受し、
こうありたいものですね。
具体的には、役員退職金計算上の以下の3要素の合理的根拠を
しっかり整備しておくことです。
▼要素A … 最終役員報酬月額
▼要素B … 在任期間
▼要素C … 功績倍率
例えば、否認リスクを恐れるあまり、
役員退職金規定では、
『1年未満は切り捨てとする』
『1年未満は6ヶ月未満は切り捨て、
6ヶ月以上は切り上げる』
といった表現が使われるケースがあります。
新規案件で実際のところ、
従前の顧問税理士が作成した規定を見ると、
上記の表現が用いられている場合があります。
しかし、これでは明らかに不利ですね。
『1年未満は切り上げるものとする』
この文言を規定に必ず盛り込むべし。
また、生命保険会社が出しているモデル規定には、
『功績倍率3.0倍の他、
功労加算金30%を支給する』
という表現をよく見かけます。
しかし、これは鵜呑みにしたらダメ!
確かに世間一般的には代表者の場合、
『功績倍率3.0倍』
程度が妥当と言われています。
ただ判例を見ると、バラツキが見えます。
▼昭和56年4月7日裁決
2.34倍
▼昭和59年12月25日裁決
3.4倍
▼昭和62年9月29日裁決
3.55倍
▼平成8年9月30日裁決
3.9倍
▼平成23年1月24日裁決
1.92倍
以上のように、国側が認定した倍率にバラツキがあるのは、
国税が納税者と同業種・同規模の
平均値を集めて、計算しているからです。
平均と言っても…
わずか2~5社程度なのですが…
しかし、国税が調査したデータは判例上、絶対なのです。
このように考えれば、功績倍率の限界値として、
どの程度が妥当なのかを読み取るべし。
もし特殊な事情が認められ、
功労加算金を支給するとしても、
▼功績倍率3.0倍
▼功労加算金30%
ということは実質の功績倍率は3.9倍を意味します。
否認リスクが高まりますので、
生命保険会社のパンフは信用しないこと!
十分留意して下さいね。
イチロー選手の名言を最後に再度紹介します。
……………………………………………………
しっかりと準備もしていないのに、
目標を語る資格はない。
手抜きをして存在できたり、
成立することがおかしい。
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ストイックな練習姿勢は凄かったの一語に尽きます。
私たちもお金を残す経営者の道を歩むべく、
しっかり準備をしていかねばなりません。
▼準備(= 生命保険で積み立て)
という意味では決してありません。
くれぐれも誤解なきようお願いします。
イチロー選手の雄姿はもう二度と見れませんが、
愛犬イチローと共に、あのプレーを永遠に忘れません。
夢をありがとうございました。
今日も経営の舵取りを楽しみましょう。