こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
前回のブログの続きです。
ここで、私(岩佐)の税理士としての職業病が発症しました。
(笑)
この老舗2社の決算内容はどうなの??
▼山本山
*当期純利益 ▲4億6426万円
*利益剰余金 56億2536万円
▼山本海苔店
*当期純利益 ▲10億9993万円
*利益剰余金 21億5029万円
あれれ?? 2社とも何と、赤字!?
非上場企業のため、貸借対照表の決算公告があるのみ。
よって、財務内容の詳細は不明。
ただ最終利益は赤字です。
本業の儲けを示す『営業利益』。
企業の真の実力を示す『経常利益』。
これらの利益が一体どうなのかも不明。
ただ私(岩佐)は大きな問題ではないとお見受けしております。
その根拠は以下の通りです。
▼内部留保(利益剰余金)が潤沢
▼実質無借金経営
つまり、単年度の赤字ではビクともしない。
そんな強固な財務体質が見え隠れします。
さすが、200~300年企業は違います。
2社の赤字から見えるのは、
“次の成長のために崩しを入れている”
ということ。
“崩れている”のではありません。
自滅では決してありませんので、
誤解なきよう、よろしくお願いします。
意図をもって、
“崩しを入れる”
ことを敢えて行っている。
これこそ、真の赤字の意味である。
私(岩佐)はこのように見ています。
老舗の世間一般的な弱みとして、よく見られるのは何か??
それは、過去のしがらみにとらわれ、革新性を見失う。
そして、完全に守りに入ってしまうということ。
しかし、2社のこれまでの歩みには、
こうした組織文化は一切見えません。
山本山10代目の現社長は、こうおっしゃっておられます。
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アメリカでお茶とハーブを取り扱う
現地法人を買収した。
この事業が次の100年のカギになる。
ヒット商品に育つまでには時間がかかる。
想いが形になるまでには、
三代かかる。
だからこそ、心に決めていることがある。
自分でやりたいことは、
自分でやらない。
自分のやりたいことこそ、
次の世代の人に手がけてもらう。
その方が事業承継がスムーズに行く。
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中小企業の事業承継が社会問題化する中、
大変素晴らしい理念です。
敬服の限りです。
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我々会計の専門家や金融機関が『良い企業』
と評価する決算書があります。
▼収益性
*売上高営業利益率
*売上高経常利益率
*売上高当期純利益率
*売上高販管費比率
*総資本経常利益率
*自己資本当期利益率
▼安全性
*流動比率
*当座比率
*固定比率
*自己資本比率 などなど。
上記の経営指標の数値が高い。
まさに理想的な型と言えるかもしれません。
しかし、こうした組織が必ずしも良い企業だとは言えません。
確かに収益性や安全性は高いでしょう。
しかし、
【成長性の低い成熟企業】
の可能性も大いにあります。
もし、
▼成長性
を未来へ向けて高めようとするならば、
【財務数字を敢えて悪くする】
期間も必要です。
【長期】で理想の型を作るには、
【短期】で理想の型を崩す。
崩しを入れなければ、次の成長はあり得ないからです。
問題は意図的に崩しを入れた後の
【復元力】
の有無にあります。
大きな借入をして、自社ビルを建てる。
これも意図的に崩しを入れる経営判断と言えるでしょう。
しかし、あまりに大きく財務バランスが崩れると、
復元力が働かなくなることがあります。
かつて、今は亡き長銀が豪勢な自社ビルを建てた。
その数年後に経営破綻。
そんなことがありました。
『復元力が働く範囲内で、
数字をどこまで崩していくのか?』
この見定めこそ、経営手腕です。
崩しを入れた後に、復元力を働かせる。
これを実現できた経営者だけが、
組織を次の成長軌道に乗せられるのです。
▼理想的な型をまず作る。
▼それに安住せず、理想的な型を意図的に崩しにかかる。
▼その後、復元力を働かせる。
このスパイラルこそ、経営者の仕事なのかもしれません。
それでは、崩しを入れた後の
復元力のタイムリミットはどれくらいか??
答えは【2年】です。
そのヒントになるのが、坂根正弘氏。
800億円の赤字の中で社長に就任し、
コマツをV字回復に導いた名経営者。
2009年のハーバードビジネスレビュー、
『在任中に実績を上げたCEO世界トップ100』
として日本人首位になられた方です。
坂根氏はかつてこう言われました。
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再建の目途を区切るとすれば、2年。
3年というのは長い。
1年では結果が出ません。
丸2年で結果が出なければ、
会社全体が疲弊してしまいます。
本当のところ、3年くらいは欲しい。
しかし、3年は結構長いんです。
それだけの時間は、なかなか待てません。
よって、再建は2年だと思います。
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百戦錬磨の経営者ならではの味わい深いお言葉です。
(昨年は母校同窓会で念願のご挨拶ができ、
身に余る光栄でした。)
https://www.tfp-j.com/wordpress/index.php/archives/2180
復元力のタイムリミットは2年!
自社ビルを建てることにより、崩しを入れても、
さすがに2年で復元力は働かない。
ここが注意すべきポイントです。
裏を返せば、財務の知恵は以下の通りと言えます。
『2年で復元できると思える範囲内で、
敢えて数字を悪くすればよい。』
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山本海苔店の今日の礎は、前述のように、
1869年(明治2年)の『味附海苔』
の開発の成功にありました。
海苔の味として白羽の矢が立ったのは?
『醤油』でした。
醤油の老舗と言えば、キッコーマン。
発祥は、1661年。
社歴は300年を突破し、
400年企業まっしぐらです。
現社長の堀切功章氏には、こんな名言があります。
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13代目社長として、
先代たちの積み重ねてきた経営を
繋がなくてはいけない。
いまの業容も56年前の経営陣が
海外進出を決断したお陰だ。
自らの意思決定が50年後、100年後
の未来を見据えたものでなければ、
という思いはある。
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経営者は日々、意思決定の連続です。
ただその自らの経営判断が50年後や100年後を
見据えたものだと堂々と言えるか??
私(岩佐)自身、お恥ずかしい限りです。
せいぜい、まあどうでしょうか?
3年後、5年後、10年後かな…
(汗)
キッコーマンの社名の由来とは??
千葉県香取市に総本社とする香取神社の亀甲。
これに『亀は萬年』をかけたそうです。
つまり、亀が長寿であることにあやかった。
そんな社名なのです。
長寿企業になるには、社名も大切なんですね。
良い学びを得ることができました。
『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』
by ビスマルク(ドイツ鉄血宰相)
どんな時代でも、ビクともしない経営体質を作る。
そのためには、長寿企業の研究が一番です。
今日も社長業を楽しみましょう。