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【労務管理考】自然災害に負けず、頑張りましょう!

 

こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの

税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。

昨日の台風21号により、私どものオフィスも臨時休業。

車の横転事故、冠水、火災、家屋損壊、大規模停電など。
各地で甚大な被害をもたらしました。

私どもの神戸のクライアントより、冠水被害に見舞われたとの

連絡が入り、胸を痛めております。

心よりお見舞い申し上げます。

今年は地震、大雨、台風と自然災害が特に多いです。

関西は受難の年となりました。

 

 

大阪信用金庫の統計調査を紹介しましょう。

大阪北部地震や西日本豪雨が
中小企業に及ぼした影響に関する調査結果。

▼地震と豪雨について『事業に影響があった』

… 38.2%

 

▼具体的な影響の内容

*1位 … 従業員の出社 (42.9%)

*2位 … 販売の停滞  (27.6%)

 

 

▼影響の回復度

*1位 … すでに回復  (71.1%)

*2位 … 建屋の損壊で
いまだ回復せず(14.5%)

 

 

これは大阪信用金庫の取引先715社に対する回答結果です。

上記は6月の大阪府北部地震や、
7月の西日本豪雨時の調査です。

昨日の台風の影響も大いに心配されるところです。

 

自然災害が原因で、公共交通機関が停止。

それにより職場において、

 

▼全日休業とする

▼就業時間中に早退させる

 

といった場合の賃金はどうなるのか??

:
:
:

その前に、経営者が知っておくべき
労基法の必須知識をお話ししましょう。

労基法26条にこんな規定があります。

 

……………………………………………………

使用者の責に帰すべき事由による
休業の場合、

使用者は休業期間中、
当該労働者に対し、

その平均賃金の100分の60以上の
手当を支払わなければならない。

……………………………………………………

 

つまり、経営者の責任で休業した場合、
日給ベースの6割以上の賃金を支払うべし。

ザックリ言えば、こんなイメージです。

上記条文で言う、

 

【使用者の責】

 

の範囲はどこまで含まれるのか?

労基法では【使用者の責】は大変広範囲です。

業績悪化に伴う経営不振のため、仕事がない状況に陥る。

そこで、生産調整を余儀なくされ、休業した場合。

これはまさに【使用者の責】あり!

労基法上では、そう判断されることになります。

 

また、取引先の倒産により部材調達が不可能に。

そのため仕事がなく、やむなく休業とした場合。

この場合でも【使用者の責】あり!

労基法上では、そう判断されることになります。

自社の経営不振ではなく、
あくまで取引先の経営障害による休業でも、
経営者の責任とされるのです。

故一倉定先生の名言として、
先日のブログで以下を紹介しましたね。

 

……………………………………………………

電柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、
みんな社長の責任だ。

……………………………………………………

 

 

東レ経営研究所元社長の佐々木常夫氏に、
こんな名言があります。

 

……………………………………………………

そもそも世の中は理不尽なものです。

まずはその現実を受け入れなくては
いけません。

……………………………………………………

 

佐々木常夫氏は東京大学卒業後、東レに入社。

2001年、同期トップで取締役に。

まさに絵に描いたようなエリートでいらっしゃいます。

しかしプライベートでは大変苦労されていらっしゃいます。

長男が自閉症になり、しばしば問題を起こし、
その世話に追われる。

妻は肝臓病とうつ病を患い、大阪・東京と6度の転勤。

そんな中で、破綻会社の債権や事業改革で、
仕事も多忙を極める。

そんなご苦労を重ねてこられながらも、
多大なる功績を残された佐々木氏の言葉には、
大変重みがあります。

 

 

これらの名言を法的に解釈したのが、
まさに労基法26条と言えるでしょう。

使用者の責任は本当に広範囲に定められています。

経営者は理不尽な世界で生きているのです。

 

 

それでは、自然災害による休業は、
労基法上どう解釈されるのか??

結論から言えば、こうなります。

 

 

▼自然災害による休業

⇒ 使用者の責任なし

⇒ 休業手当の支払義務なし

 

(注)休業手当:平均賃金の60%

 

さすがに労基法も“鬼”ではありません。

何でもかんでも労働者に不利なことは、
すべて経営者の責任だ!?

とは言っていませんので、ご安心下さい。

(笑)
自然災害はあらゆる経営者にとって、不可抗力です。

自助努力では全くコントロール不能です。

 

昨日、金沢で予定されていたプロ野球。

巨人対横浜DNAの試合は、
台風の影響で中止となりました。

横浜DNAのラミレス監督はこうコメントしました。

 

「天候だけはどうしようもない。

しょうがないシチュエーションだね。」

故一倉定氏の言葉を借りれば、
電柱が高いのも郵便ポストが赤いのも、
経営者の責任かもしれません。

ただ地震・大雨・台風は法的に、
経営者の責任はゼロと解釈されています。

自然災害はあくまで外部要因であり、
使用者の経営管理上の責任なし。

このように法的に考えられているのです。

就業時間中に天候の悪化などにより、
社員を早退させる場合も同様の考え方です。

この場合も、使用者責任の範囲【外】とされています。

よって、早退したことにより、
1日のうち一部就業しなかった時間。

この時間に相当する差額の賃金は、
休業手当の対象になりません。

単に雨が降っているから早退。

これは合理的な理由に欠けるため、
使用者の責と解釈される場合もあります。

但し、暴風や大雨の警報など客観性のあるものがあれば、
不可抗力とみなされます。

 

 

また、自然災害により就業できなかった日は、
有給として認められるのか??
つまり、事後的に年次有給休暇に振り替えたい旨
の申出が社員からなされた場合、

法的に認める義務があるのか??

 

答えはNo。

 

なぜなら、自然災害により就労不能になった日は、

 

【休業日であり、労働日ではない】

 

からです。

労働日に就労免除を得る年次有給休暇が

発生する余地はそもそもありません。

以上より、社員の申出に応じる義務はありません。

 

 

自然災害時の労基法の取扱いは、
経営者にとって理不尽な話は一切なし。

つまり、自然災害による就労不能時間は、

 

【ノーワーク・ノーペイ】

 

で法的にOKとされているのです。

:
:
:

しかし、以上は法的な話にすぎません。

法的に有給を認める義務はないが…

 

 

▼任意で社員の有給申出に応じることは問題なし

 

 

実務上では、こんな取扱いになっています。

自然災害による休業日を社員の希望に応じ、
有給にすることを検討したい。

そうお考えの経営者に、
有給に関する統計データを紹介しましょう。

厚生労働省による調査で、
わが国の平均有給消化率は一体いくらか?

 

49.4%(平成28年度)。

 

とても低い数字です。

政府が声高に『働き方改革』を提唱しても、
各企業の現場では、100%の有給消化は程遠い状況。

そんな厳しい現実が浮き彫りになっています。

もしあなたの経営の現場でも、
有給消化が進んでいない現状があれば、

法的に義務はないとはいえ、自然災害による休業は有給扱いに
してもよいでしょう。

労基法は私法上の効力として、あくまで

 

【最低基準】

 

を定めたものと考えられています。

よって、労基法に達しない部分は、

 

【無効】
となりますが、労基法の定めより有利なものは、
【有効】のままで問題なし

とされています。

経営者が専制君主のように好き勝手に、
社員を奴隷のように扱ってはいけない。

この精神が根底に存在するのが、
労基法であると認識して下さい。

 

自然災害に負けず、頑張りましょう!

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