こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
夏の風物詩といえば、甲子園高校野球。
全国高校野球100回記念選手権大会が開幕しました。
目玉は『甲子園レジェンド始球式』。
かつて甲子園を沸かせた元球児が連日マウンドに
上がります。
▼松井秀喜(星稜)
▼石井毅(箕島)
▼定岡正二(鹿児島実)
▼牛島和彦(浪商)
▼平松政次(岡山東商)
▼谷繁元信(江の川)
▼水野雄二(池田)
▼本間篤史(駒大苫小牧)
▼坂本佳一(東邦)
▼中西清起(高知商)
▼安仁屋宗八(沖縄)
▼板東英二(徳島商)
▼金村義明(報徳学園)
▼中西太(高松一)
▼桑田真澄(PL学園)
▼佐々木主浩(東北)
▼太田幸司(三沢)
▼井上明(松山商)
蒼々たる顔ぶれです。
この中でも秀逸の存在は、松井秀喜氏でしょう。
読売巨人軍を経て、NYヤンキースなどで活躍。
2013年には、国民栄誉賞を受賞。
先日の日本経営合理化協会主催の全国経営者セミナー
にもご登壇。
http://www.tfp-j.com/pdf/20180720.pdf
コマツをV字回復させた名経営者の坂根正弘氏との対談。
松井氏は初日、私(岩佐)は3日目の登壇でしたので、
お目にかかることができず、残念!
https://www.jmcatop.jp/seminar/latest.html
ただ松井氏が座ったという椅子に
講師控室では座らせて頂きました。
しばらくお尻は洗いたくなかったです。
夏なのに、不衛生でごめんなさい!
(笑)
松井氏の甲子園伝説と言えば『5連続敬遠』ですね。
1992年夏の明徳義塾戦。
高校野球史上に今なお事件として、
語り継がれています。
アルプス席から次々と投げ込まれるメガホン。
「帰れ」コールがスタンド中をこだまし、
「グラウンドに物を投げ込まないで下さい。」
との場内アナウンスをかき消す。
試合終了後の明徳の校歌斉唱時。
騒然としたスタンドの声で校歌が全く聞こえない。
明徳ナインが宿舎に戻れば、
2日で1000本の抗議の電話が止まらない。
「ダンプ突っ込ますぞ!」
「殺すぞ!」
「爆破するぞ!」
そんな脅迫めいた電話もあったと言います。
明徳は次の広島工業戦で大敗。
試合後、明徳ナインはこう言ったとか。
「甲子園に来ない方がよかった。
つらいことしか思い出になりませんでした。」
ストライクゾーンで松井選手と正々堂々と
勝負しに行かなかった。
フェアプレー精神に一石を投じた。
そんな前代未聞の出来事でした。
:
:
:
:
税務の世界も高校野球と同じです。
「ストライクゾーンで勝負しに行かねば、
真の資産防衛は図れない」
このことを肝に銘じるべし。
例えば、平成28年11月の佐賀地裁判決を紹介しましょう。
医師が同族法人(MS法人)に支払った
高額な不動産賃借料に対し、
▼所得税法157条の1項
(行為計算否認規定)
が適用された事例です。
原告である医師は診療所の開設に際し、
以下の状況にありました。
▼診療所として、MS法人が所有する
土地建物を賃借
▼医師がMS法人に支払った賃料
*平成20年度 1240万円
*平成21年度 1260万円
*平成22年度 1260万円
▼MS法人は赤字であり、債務超過にあった
税務当局は上記の賃料が「著しく高額」として否認。
裁決として以下の結論に至りました。
▼本件の賃料の適正金額
*平成20年分 231万2532円
(1008万7468円否認)
*平成21年分 231万7632円
(1028万2368円否認)
*平成22年度 231万7632円
(1028万2368円否認)
上記の根拠として、裁決では以下のように認定されました。
▼医師がMS法人に支払った賃料が、
著しく高額であることは明らかである。
▼医師の行為は通常の経済人の行為として、
極めて不合理である。
▼医師がMS法人の株主であるという
特殊な関係にあったからこそ、
なしえた同族法人の行為であると
いわざるを得ない。
▼そのような行為を許した場合には、
医師の所得税の負担を不当に減少させる
結果となることは明らかである。
▼よって、医師は適正賃料の範囲でしか、
必要経費に算入することは認められない。
『個人増税 vs 法人減税』の流れに乗る。
よって、医師個人からMS法人に対し、
賃料をたくさん払う。
これにより、
▼医師個人の所得税は大きく圧縮OK
▼医師ファミリー全体で大きな税効果が得られる
というメリットが得られます。
税務戦略としては有効性の高い判断であったと言えます。
さすが! 医師先生は頭脳明晰です。
しかし、松井選手に対する明徳の投手と同じ??
ストライクゾーンからあまりに
大きく外れた球を投げている??
私(岩佐)は税理士として、
本件をこのようにに分析するのです。
公認野球規則では、
ストライクゾーンをこう定義しています。
「打者の肩の上部と、
ユニフォームのズボンとの中間点に
引いた水平のラインを上限とし、
ひざ頭の下部のラインを下限とする
本塁上の空間をいう。」
「この空間は本塁の形を底面とした
五角柱と考えればよく、
球審はこの空間を通過したと
判定した投球をストライクを、
通過していないと判定した場合は
ボールを宣告する。」
本件診療所の類似物件について、
福岡国税局長は下記を選定基準として、
示しています。
▼半径500メートル以内については、
場所的類似性が高く、
地域要因が類似している。
▼構造・用途が類似している。
▼規模や建築費・築年数が類似している。
上記の選定基準において【客観的合理性】
が認めれれば、税務上ストライクゾーンにある。
そう判定されるのです。
『甲子園が割れた日
~松井秀喜5連続敬遠の真実』
中村計氏著(新潮文庫)には、こんな記載があります。
……………………………………………………
明徳義塾監督の馬淵は、
敬遠を実行する上で、試合前夜、
選手に3つの偽装を課していた。
一.捕手は座ったまま、
外に外させること
(捕手の証言)
「立つなと。横にそらせ、と」
一.外野はフェンスぎりぎりまで
下がること
(外野手の証言)
「松井が打席に入ったら下がれ、って。
要するに演技でしょう?」
一.投手は不調を装うこと
(投手の証言)
「入らんフリをしろって。
おかしいなあ~って、やれって」
あからさまな敬遠ではなく、
勝負に行っているが、
偶然外れている、
そんな風を装うためだった。
主将はその意図をこう理解していた。
「スタンドが騒ぎ出すのを
抑えたかったんでしょうね。」
だが、馬淵にこれらの偽装を確認すると、
捕手を座らせたこと以外に関しては、
「俺はあんなことをせいとは
言わんかった」
と否定する。
選手のほとんどは間違いなく、
そういう指示はあったと
証言しているのだが…
十中八九、馬淵がそう命じたことは
間違いない。
それなのに馬淵は、
そのことを完全に忘れてしまっている。
おそらく、こういうことだ。
馬淵は常々話している。
「あの試合は自分の誇り」だと。
誇りとして留めておくには、
「潔さ」
が不可欠だった。
ただ潔さと、
こそこそとしたイメージを想起させる
偽装行為は反対色だ。
それゆえ過去に置き去りにされ、
今では完全に消え去ってしまった
のではないだろうか。
……………………………………………………
明徳の馬淵監督も勝利のために、
松井選手を歩かせたとは言え…
ストライクゾーンで勝負しに行っている。
本音はそんなふうに演出したかった
のかもしれません。
あからさまな敬遠はやはり、やりたくなかった。
これがあの事件の真実だったのです。
:
:
:
税務の世界も同じです。
ストライクゾーンがどこなのか??
それをしっかり見極めましょう。
目先の節税のために、
ストライクゾーンから大きく外れた球を投げても、
その後の代償は大きいものがあります。
税務の世界は、
単なるマネーゲームではありません。
数字遊びではないのです。
同族関係者間での家賃や譲渡価額等の決定。
この論点が資産防衛のキモです。
それだけに専門性の高い判断が必要です。
法令・通達だけを知っているだけではダメ。
判例や裁決事例を十分に検討する。
これが必要不可欠です。
今日も社長業を楽しみましょう。