こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦@税理士です。
もうすぐ8月になりましたね。
夏の名曲と言えば『少年時代』です。1990年に発表。
井上陽水氏の最大のヒット曲。
そんなふうに称されています。
この中でこんな歌詞があります。
「夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれにさまよう
8月は夢花火 私の心は夏模様♪」
この曲は多くの歌手がカバーしています。
▼美川憲一
▼岩崎宏美
▼宇多田ヒカル
▼夏川りみ
▼柴咲コウ
▼忌野清志郎
▼デーモン
▼秦基博
▼佐藤竹善
▼中西保志
▼島谷ひとみ
などなど。
これだけ多くの歌手に唄われるとは…Great!!
「8月は夢花火 私の心は夏模様♪」
と口ずさみながら、
8月を乗り切りたいところですが…
ちょっと待った!!
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まもなく8月が始まるに際し、
7月をおさらいしておきましょう。
経営者として絶対に押さえておきたい
7月の経済トピックとは??
▼出光興産・昭和シェル合併
このニュースがなぜ、大事なの??
どうせ大手企業の話でしょ。
自分達には何の関係もないのでは??
そう思うなかれ。(笑)
経営者にとって色んな学びが得られます。
去る7月10日、
出光興産と昭和シェル石油の経営統合発表。
これは何と!
基本合意から3年の歳月を経ていました。
なぜ、正式決定までそんなに時間を要したのか??
背景に、創業家の反対があったからです。
7月は、出光と昭和シェルの経営統合の他、
注目すべき経済ニュースがありました。
それは、
▼アイリスオーヤマの社長交代
です。同社の2017年12月期の経営成績は、
▼売上高 1420億円
▼経常利益 136億円
▼実質無借金経営
と強固な財務体質を誇っています。
前社長は名経営者として名高い大山健太郎氏。
7月1日付で今回、長男の晃弘氏へ社長交代しました。
大山健太郎氏は今回の社長交代について、
こう語っています。
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長男は入社して15年、
海外の責任者としてやってきた。
これから伸びる事業として、
次期社長に適任だ。
ただ正直に言うと、
20年前から息子を社長にしようと
考えていた。
オーナーは判断を下すスピードも速い。
大事なのは、
創業の理念が引き継がれること。
そのためには同族経営がいい。
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アイリスオーヤマは敢えて、上場の道を歩んでいません。
不特定多数の一般投資家(株主)の
目を気にする必要は一切なし。
それゆえに、経営判断をスピーディーに行える。
仙台を本拠に見事な同族経営を展開されています。
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アイリスオーヤマとは対照的に、
出光の今回の経営統合の正式決定には、
3年もの月日が流れてしまいました。
スピーディーな経営判断だったとは、
とても言えません。
上場企業でありながらも影響力を持ち続ける。
そんな創業家の強い反対があったのです。
創業家が反対した理由は2つありました。
1つ目は、企業体質の問題。
大家族主義を社是に掲げてきた出光と、
7つの労組がある昭和シェル。
両社は水と油の体質で合併に多大な労力を要すること。
2つ目は、1953年の日章丸事件以来、
イランと親密関係を持つ出光が、
サウジアラビア国営資本の資本が入る
昭和シェルと合併することは、
両国の対立が深まる中、不適当であると考えること。
つまり反対理由はズバリ【創業理念と反する】
ということでした。
また、創業家はなぜ、法的に合併をストップできたのか?
それは【33%超の拒否権】の議決権を有していたからです。
合併の決議には【特別決議=3分の2以上の合意】
が必要です。
よって、33%超の議決権を有する創業家が反対すれば、
合併は正式決定できません。
これは経営者にとってブラックボックスになりがちな、
【株式保有割合=経営支配権】
の学びになります。
次の【3つの数字】は覚えておきましょう。
★3分の1(33%超)
★過半数(51%以上)
★3分の2以上(67%以上)
この3つはそれぞれ何を意味するのか?
以下を要チェックです。
▼3分の1(33%超)
⇒ 【拒否権】を発動OK
▼過半数(51%以上)
⇒ 【普通決議】の可決OK
(例)
*取締役・監査役の選任
*取締役の解任
*取締役・監査役の報酬の決定
*株主配当の決定(金銭による)
*決算書類の承認
▼3分の2以上(67%以上)
⇒ 【特別決議】の可決OK
(例)
*合併
*増資&減資
*会社分割
*株式交換・株式移転
*定款の変更
中小企業において一般的に株主分散はよくないと言われます。
株主分散により経営の重要な意思決定ができなくなり、
トラブルの元凶になるからです。
【田分け者 = たわけ者】
とも言われる所以です。
「後継者にある程度、
経営を任せても良いけど、
万一間違った方向に進んだ場合の
リスクヘッジはしておきたい。」
そんなケースの場合は【3分の1(33%超)】
を最低確保しておくべきです。
「こいつを後継者に完全に決めた。
全幅の信頼を置いている。
トラブルにならないように、
多くの株をできるだけ
持たせておきたい。」
そう考えるならば、最低でも【過半数(51%以上)】
を持たせなければなりません。
そして理想は【3分の2以上(67%以上)】
にすべきでしょう。
税金対策だけを考えれば、
過半数や3分の2以上どころか、
【100%(全株)】
を後継者に渡すのがベストになります。
ただこの考え方は【部分最適】にすぎません。
【全体最適】で最終判断して下さい。
また、
「創業者利益は確保していきたい。
自分の息子や娘は後を継がない。
次期社長は非同族だし、
次世代への負担は最小限にしたい。」
と考えるならば、【持株会社(ホールディングス)】
の形態がベストです。
こうすれば、『個人増税 vs 法人減税』
の今日の税制トレンドに乗れます。
次期社長はあくまで “雇われ社長”になりますから、
創業家の思いひとつで簡単に社長を解任に
することができます。
例えば、山本海苔店。1849年創業の長寿企業です。
『日本の海苔 海苔は山本』のキャッチは有名ですね。
東京日本橋の地で創業以来、今日まで運営されています。
日本橋は「火事と喧嘩は江戸の華」と言われる所です。
そんな地で、数度の火事や戦災により店舗を焼失。
そうした危機から這い上がり、『宮内省御用達』
となり、味附海苔も大ヒット。
そんな山本海苔店の不文律は何か??
『山本3家から、
1人ずつしか入社できない』
人数の制限は親族間の対立を防ぐうえで
重要であると考えていたからです。
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出光の場合、上場した以上、不特定多数の一般投資家
という株主の存在がありました。
よって、株主分散は宿命です。
しかし、創業家の影響力を残しておきたい。
そのために拒否権を発動できる3分の1超の株式
を保有していたのです。
結局、今回の出光の合併劇では、
どんな結末を迎えたのか??
創業家と対立する経営陣が財務基盤の強化を理由に
増資へ。
その結果、創業家の持株比率が一時期約26%に低下。
その後、創業家も株式を買い増しますが、
拒否権33%超までには遠く及ばず。
最後は創業家も賛成に回り、経営統合がようやく
決定しました。
後世で無用なトラブルを起こさない。
そのために、あなたの法人の経営方針に
マッチした株主構成にして下さい。
今月の出光の経営統合のニュースは事業承継のレッスン
になります。
今日も社長業を楽しみましょう。