こんにちは、JR大阪駅前のTFPグループの
税理士法人トップ財務プロジェクト代表の岩佐孝彦@税理士です。
長友選手が稲盛さんの著書から感銘を受けた言葉。
「心が呼ばないものが
自分に近づいてくるはずがない」
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戦前の日本の大富豪で、この言葉を実践した人物。
その一人が、梅屋庄吉。
梅屋庄吉の心が呼んだのか、
彼を引き寄せた中国人がいました。
その名は、孫文。
そうです。あの中国の革命家です。
梅屋庄吉は、日本で始まったばかりの映画ビジネスで
巨万の財を成しました。
中国の革命家と、長崎生まれの野心的な実業家。
お互いまだ20代だった二人が出会ったのは1895年。
写真の技術を学んでいた梅屋は、
シンガポールで写真館を開いた後、香港に移り住み、
『梅屋照相館』を営んでいた。
この写真館で出会った二人は、東洋平和の実現をテーマに
夜遅くまで語り合った。
「中国の未来のためには、
革命を起こし、清朝を倒すしかない」
そう話す孫文に対し、梅屋はこのように言ったのは有名な話。
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君は兵を挙げたまえ。
我は財を投げて支援す。
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梅屋はこの言葉を生涯守り通したそうです。
自ら稼ぎ出した巨万の富を孫文に送り続けました。
孫文の革命運動を資金面で支え続けたのです。
外国の革命家に事業で稼いだ資金のほとんどを寄付する。
そんな経営者が現代の日本の中で、
果たしているでしょうか??
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美女4000人に30億円を寄付した(貢いだ)?
紀州のドン・ファンのご逝去は最近話題になりました。
このように、美女のパトロンはごまんといる??
しかし、外国の革命家のパトロンは彼だけでしょう。
私(岩佐)のような庶民は、革命家どころか美女も含め、
誰のパトロンにもなれませんが…
(笑)
梅屋と孫文の友情の間には、
日本と中国といった国民国家の感覚を超え、
志を同じくする二人で、
何か新しい世界を作り上げていく。
そんな共感があったのでしょう。
『革命をプロデュースした日本人評伝 梅屋庄吉』
この著者の小坂文乃氏はこう語ります。
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梅屋は確かに孫文に巨額のお金を
投じました。
ただそれは孫文のためではなく、
欧米列強から日本とアジアの文化を守り、
東洋の平和を実現するためでした。
全ての財産を投げ打ったのも、
自分自身が叶えたかった夢だったからこそ、
彼は孫文を通して、
自らの夢を実現しようとしたのでしょう。
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彼の革命への援助は単に金持ちの道楽ではなく、
彼自身が全身を投げ打って行った必死さゆえのものでした。
それは教条的な必死さではなく、
人間としての存在を賭けた必死さ。
私(岩佐)は経営者の端くれとして、
梅屋庄吉の生き様に感銘を受けます。
なぜなら、経営も同じだからです。
『一度やり始めたら、何があっても本気になって、
最後までやり抜く』
そんな必死さがなければ、
ビジネスを成功させることなどできません。
梅屋庄吉の情熱を爪の垢を煎じて飲ませて頂きます。
一度やり始めたら、何があっても本気になって、
最後までやり抜く。
経営におけるお金の世界でそのシンボルとなるのが、
『自社株(=出資持分)』
でしょう。
創業者が志を持って、事業をスタートさせる。
なけなしの資金をはたいて、ビジネスを始める。
まさにゼロを1にする作業。
そんな創業時に狼煙を上げたシンボル。
それが、
『自社株(=出資持分)』
です。
志を持って創業し、本気でビジネスに取り組んだ結果、
組織が成長軌道へ。
健全経営を実現し、繁栄の道を歩む。
その結果、自社株の評価が跳ね上がる。
そして事業承継に際し、
次世代への相続税の問題が生じる。
このような事態が社会問題化する中で、
色んな施策が近年打ち出されています。
その大きな目玉が、
▼納税猶予制度(事業承継税税制)
です。
一定の要件を満たせば、自社株(=出資持分)にかかる
相続税&贈与税を猶予&免除してあげましょう。
そんな国策です。
中小企業においては平成21年度税制改正で創設。
しかし…
平成21年創設以来平成28年3月までの
認定件数は以下の通り。
▼贈与税 626件
▼相続税 894件
あまり活用されていません。
また、医療法人の場合、『非営利性』という大義名分があります。
そのため、納税猶予制度も一般の事業法人と違う取扱いです。
平成19年4月1日【以後】設立の医療法人の場合、
【持分なし】法人
に強制的に該当するため、このような相続税の問題は無関係です。
(近年新規設立の医療法人の先生方はご安心を!)
一方、平成19年4月1日より【前】に設立された医療法人の場合、
【持分なし】
に移行の認定OK。
こんな制度が医療法人の【納税猶予制度】
として平成26年度税制改正で創設。
しかし…
平成26年10月から平成28年9月末日
までの2年間の申請実績は以下の通り。
▼認定を受けた医療法人 61件
▼持分放棄が完了した法人 13件
医療法人も一般の事業法人同様、国策が活用されていません。
ここで興味深いデータを紹介しましょう。
医療法人理事長の持分なし移行アンケートの結果です。
日本医師会調査によれば、1000件以上の医療法人のうち
約62%は持分なしに移行する予定なしと回答。
その理由は以下の通りでした。
▼出資持分はオーナーシップの源泉であり、
放棄するつもりなし
▼相続税を支払っても、
医療法人を子孫に承継させたい
ドクター先生のこのような回答を見ても、
【自社株(=出資持分)】は創業オーナーファミリーにとって、
【特別で崇高な“財産権”のシンボル】と言えるでしょう。
ただ従来の納税猶予制度は、使い勝手が悪いものがありました。
よって、実際の申請件数は、伸び悩みを見せていました。
そこで、政府も現状打破のため、
納税猶予制度の要件を緩和しました。
▼一般の事業法人 … 新事業承継税制
(平成30年1月1日より)
▼医療法人 … 認定医療法人制度改正
(平成29年10月1日より)
上記の要件緩和の詳細については割愛しますが、
デメリットも一部あるため、
諸手を挙げて推奨できる制度とは言えない。
そんな側面もあります。
孫文にはこんな名言があります。
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世間でいう成功者とは、
一時の栄えにすぎない。
志と正義を持つ者こそが、
万世にわたる功績を成す。
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「金持ち三代続かず」とは一線を画す。
創業ファミリーが代々繁栄の道を歩む。
そして、
公器として法人の永続的発展を通じ、
万世にわたる功績を残していく。
これが経営者として、
『一度やり始めたら、何があっても本気になって、
最後までやり抜く』
という究極の目指すべき姿でしょう。
梅屋庄吉は自分の手で、孫文という人を永遠化し、
万世にわたり彼の功績を残したかった。
そんな思いを込めて、孫文の死後も彼の銅像を造ることに
長い時間と労力をかけたそうです。
素晴らしいエピソードに敬礼!
以上のように【自社株(=出資持分)】は、
創業オーナーファミリーにとって、
【特別で崇高な“財産権”のシンボル】
ではありますが、
先代時代に多方面へ分散しているがあまり、
次世代に禍根を残している。
そんなケースも経営の現場では散見されます。
いわゆる自社株の分散傾向にあるのは、
【たわけ者(=田分け者)】
です。
広辞苑ではこう書かれています。
「たわけ者とは、馬鹿者、ふざけた者」
たわけの語源は元来『田分け』と書きます。
子供の人数で田畑を分けると、孫や曾孫の代に
受け継がれていくうちにそれぞれの持つ田んぼの
面積は狭くなる。
その結果、少量しか収穫できず、家系が衰退する。
このような方法で財産を相続することを愚かとみなし、
たわけ者と呼ぶようになったとか。
自社株は特別な崇高な財産権のシンボル。
安易な分散は禁物です。
田分け者にならないようにご注意を!
『金持ち三代続かず』の壁を見事に突破!
そんな名経営者が星野佳路氏。
星野リゾート4代目社長です。
3代どころか、4代目として、
社員数2000人を超えるガリバー企業へ。
1904年に創業した軽井沢の温泉旅館
を見事なまでに成長させました。
『星野リゾートの教科書』(日経BP社)
この書籍の中で、こんな記述があります。
……………………………………………………
どんな経営者もいつか会社を去る日が
やってくる。
会社を次の世代に引き継ぐとき、
▼潤沢な資金力
▼素晴らしい事業モデル
▼魅力的な組織文化
が揃っていれば、理想的かもしれない。
しかし、これらを残すには、
経営者として成功することが必須である。
成功を目指して全力を尽くしても、
経営者には様々な条件が絡み合い、
そこには運の要素も含まれている。
誰もが事業を成功させ、
後継者に対して多くのものを残せる
わけではない。
そんな中で自分が確実に残せるのは何か。
星野社長は答えを探した。
そして、気づいた。
経営者としての姿勢を残すことはできる。
堂々とした生き方を示すことが
『最大の遺産』
になると。
……………………………………………………
素晴らしいお言葉ですね。
残せるお金の大小はあっても、
経営者なら誰でも残せるものがある。
相続税対策でお金を残すことは大切です。
しかし、そんな税金対策より、
もっと重要なのは…
経営者としての【生き方】を残すこと。
しっかり肝に銘じたいと思います。
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梅屋庄吉が生涯を通して、信条とした言葉があります。
『富貴在心
= この手によって造らざる富は多しといえども
貴むに足らず』
この言葉の意味は、人の価値というものはお金持ちであるか
どうかではなく、その心の中にある、
というものだとか。
実際に大富豪になった人物が言うと、
とても説得力があります。
サッカーW杯日本代表の長友佑都選手は、
著書の中でこう言います。
……………………………………………………
こんなことを繰り返していて、
世界一になるのは一体いつの日のことか。
そう打ちのめされかけたとしても、
人生とは結局、
「今日一日の積み重ね」
「いまの連続」
だと考えて、
懸命に真剣に生きていくことが大切だ。
……………………………………………………
次のポーランド戦で予選突破を決めること
を期待しています。
一日一日の積み重ねの結果、お金は残せなくても、
誰でも残せるものがある。
今日も社長業を楽しみましょう。