こんにちは、TFPグループ代表の
税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦@税理士です。
中小企業の後継者が次世代経営者として今、お手本にすべきは、
この人でしょう。
▼星野佳路氏(星野リゾート4代目社長)。
星野リゾートは1904年、軽井沢の温泉旅館から出発。
星野氏が4代目に就任した1991年当時は、
軽井沢だけで事業を営む中小企業でした。
それが今や、グループ社員2500人の一大企業へ。
売上高は非公開とのことですが、
見事なまでの事業発展を実現されています。
あの芸術的な旅館やホテルの空間は、
星野氏の天才性から生まれているのか??
『星野リゾートの教科書』(日経BP社)。
この中で、星野氏はこう述べています。
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私は社長就任以来、
経営学の専門家が書いた教科書に学び、
その通りに経営してきた。
社員のモチベーションアップも、
サービスの改善も、
旅館やホテルのコンセプトメイクも、
すべて教科書で学んだ理論に基づいている。
なぜなら、経営判断を誤るリスクを
最小にしたいからだ。
囲碁や将棋の世界に定石があるように、
教科書に書かれている理論は、
「経営の定石」である。
経営判断の根拠や、
基準となる理論があれば、
行動のぶれも少なくなる。
自分の下した判断に自信が持てる。
社員にも自信を持って、
判断の根拠を明快に説明できる。
しかし、基準を持たない経営では、
すぐに良い結果が出ないと、
「自分の判断が
間違っていたのではないか」
と疑心暗鬼になってしまう。
それが経営のぶれを生む。
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上記でいう『教科書』とは何か??
書店で平積みになっている、人気のビジネス書ではありません。
米国のビジネススクールで教える教授陣が書いたものだそうです。
「ビジネスを科学する」
という思想の下、数多くの企業を対象に
手間と時間をかけて事例を調査し、
そこから『法則』を見つけ出し、理論として体系化している。
そのため、学問的に証明され、一定条件のもとで正しさは
お墨付きだとか。
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星野社長が参考にされた一冊。
例えば、
『競争の戦略』(ダイヤモンド社)
があります。
マイケル・E・ポーターによる古典的な名著として有名です。
星野社長は、ポーターの理論をこのように評しておられます。
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それまでの経営書は、
お客様の視点に立ったマーケティングを
強調するものが多かった。
そんな中で、
ライバルの動向こそが重要という
ポーターの理論は目からウロコで、
強く印象に残った。
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ポーター理論は、ライバルとの競争環境を踏まえながら、
戦略を組み立て、徹底する意義を強調する。
そして、企業がライバルとの競争で
取るべき戦略を3つに分けています。
▼コストリーダーシップ
コスト競争力で優位に立つ戦略
▼差別化
競争相手との違いを前面に出す戦略
▼集中
特定の領域に自社の経営資源を集めて
ライバルに勝つ戦略
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それでは、星野社長はこの理論を参考にし、
どんな戦略を展開したのか??
机上の理論だけでなく、どのように
実際の経営戦略に落とし込んだのか??
皆さんとシェアしたいと思います。
例えば、高級旅館『華仙亭有楽』。
島根県松江市の玉造温泉にあり、
2007年より星野リゾートが運営。
玉造温泉には約20件の旅館がある。
客室数50~100室の中・大規模な旅館が並ぶ。
同じような旅館が多く、宿泊代の値引き競争が激しいとか。
これに対し、『華仙亭有楽』は客室数24の小さな旅館。
個人客にターゲットを絞った高級路線で収益力を高めている。
有楽はかつて、どこにでもある中規模旅館だったとか。
ターゲットを絞らず、団体客と個人客の両方を受け入れた。
その結果、価格競争に巻き込まれ、経営が行き詰まった。
星野リゾートは、有楽の再生に着手。
新しく打ち出した競争戦略に従い、客室数を半分に減らし、
全客室に露天風呂を備えるなど、高級化戦略を推進した。
ターゲットを絞ることで、運営は効率化され、
コストも下がった。
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「教科書の理論なんて、机の上でしか通用しない」
と思う人がいるかもしれません。
しかし、星野リゾートの経営はまさに「教科書」通りだとか。
有楽の再生には、ポーターの理論を大いに参考にし、
忠実に従ったそうです。
星野社長は本当に読書家でいらっしゃいます。
有楽の再生戦略は、全国の中小企業の参考になるでしょう。
経営資源の乏しい中小企業が大企業のマネをして、
『コストリーダーシップ戦略』
で薄利多売に走るべきではない??
星野社長の爪の垢を煎じて、私(岩佐)も経営理論の勉強を通じ、
経営判断を誤るリスクを最小にしたいと思います。
学生時代に学校の教科書を真面目に勉強しなかったので…(汗)
これからちゃんと勉強します!
(笑)
それでは、お金の話で経営者が勉強すべきこと
は一体何なのか?
「これはどの勘定科目にすべきか?」
「この取引の仕訳は、
借方と貸方をどうすべきか?」
こんな話ではありません。
経理担当者が学ぶべき話であって、
経営者に必要なお金の話ではありません。
会計事務所にアウトソーシングしておけばよい話。
経営者が学ぶべきお金の勉強は、
▼どこに手を打てば、利益が出るのか?
です。
厚労省の助成金で考えてみましょう。
▼人事評価改善等助成コース
(人材確保等支援助成金)
https://roumu-management.com/subsidy6.html
⇒ 平成29年度新設
▼設備改善等支援コース
(人材確保等支援助成金)
https://roumu-management.com/subsidy5.html
⇒ 平成30年度新設
上記2つはまさに新しい助成金です。
ただ共通して、こんな要件があります。
▼1年後に賃上げを【2%以上】行うこと
色んな要件がある中で、最大のネックになるでしょう。
社員は「人件費を増やしてほしい」。
経営者は「利益を増やしたい」。
この相反する両者の思いは両立できるのでしょうか??
経営者からすれば、もし両立できないのであれば…
人件費が2%アップした分だけ、
利益を圧迫することになるだけ。
人件費は固定費だ。
よって、この助成金は使えない。
そんな結論に至るでしょう。
ただ…
▼Aプラン
人件費が2%アップしても、
営業利益が12%アップ
▼Bプラン
人件費が2%アップしても、
営業利益が17%アップ
こんなプランなら、
話は変わってきますね。
もしこのプランが可能なら、
▼社員
▼経営者
の両者がハッピーになれます。
それでは、どこに手を打てばよいのか??
X社(サービス業)というこんな法人があるとします。
▼売上高 100
▼粗利益 80(粗利率80%)
▼人件費 48(労働分配率60%)
▼営業利益 5
この法人が2%賃上げする代わりに、
売上高が2%アップすれば、
▼売上高 102(2%UP)
▼粗利益 81.6(粗利率同じ)
▼人件費 48.96(2%賃上げ)
▼営業利益 5.64(12%UP)
になります。
(注)人件費以外の経費は同じと仮定
これこそ上記の【Aプラン】として、
▼人件費が2%アップしても、
営業利益が12%アップ
が実現するわけです。
つまり、粗利率80%の法人なら、経費は人件費だけ2%アップ。
その代わりに売上高を2%アップさせれば、
営業利益は12%も増えるのです。
ただ売上高を2%アップさせるのは、
ちょっときついかも…
そんなふうに考える経営者は、
次のプランはいかがでしょう??
2%賃上げする代わりに、
▼売上高1%UP
▼粗利率1%UP
をしたとします。
すると、以下のようになります。
▼売上高 101(1%UP)
▼粗利益 81.81(粗利率1%UP)
▼人件費 48.96(2%賃上げ)
▼営業利益 5.85(17%UP)
これこそ上記の【Bプラン】として、
▼人件費が2%アップしても、
営業利益が17%アップ
が実現するわけです。
売上高1%アップなら、
ちょっと訪問回数を増やせばクリア??
粗利率1%アップなら、粗利率の高い商品を力を入れて、
宣伝していけばクリア??
【全員営業】
このスローガンを掲げれば、絶対に実現可能です。
こうなれば、賃上げ2%は痛くありませんね。
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このような状況の中で、
▼人事評価制度を新たに導入
▼設備投資(175万円以上)
を合わせて実行すれば、助成金受給チャンスも生まれます。
賃上げしても、キャッシュフローは劇的に向上します。
上記の仕組みは私どもでは、
【未来会計図表】
として、顧問先様に対し、経営成績報告ツールとして使用中。
経営者の仕事は、
【社員に未来を見せる】
ことです。
社員に未来を見せるために、未来会計図表を学ぶ。
これこそ、経営者に今求められる勉強である。
そんなふうに考えているのです。
星野社長はこう言います。
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会社にはビジョンがなければならないし、
そのビジョンを実現するための
組織やチームには目標がなければならない。
しかし、それに連動する目標を
個人に設定するという発想は私にはない。
一人ひとりがノルマを背負わされている。
こんな状態は精神的にきついだろうし、
そんなもので追い込んでも、
大して働かないのは目に見えている。
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賃上げする以上にみんなで利益を増やし、
社員も会社もハッピーになる。
そんなビジョンを掲げる経営者を
助成金は後押ししてくれています。
『貞観政要』で描かれた太宗の曾孫。
その名は、玄宗皇帝。
玄宗は即位30年後の晩年、
「安史の乱」
を引き起こし、王朝は滅亡寸前に。
この要因は何だったのか?
玄宗は天下泰平の安堵感からか緊張感が緩み、
絶世の美女「楊貴妃」との愛に溺れた。
これが玄宗の転落に拍車をかけたと言われています。
経営者は遊んでばかりいないで、
星野社長のように、しっかり勉強しないとダメですね…
(汗)
今日も社長業を楽しみましょう。