こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。
今日の一冊はコチラ!
『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』三木雄信(東洋経済新報社)
日々の業務推進の中で、クライアントの経営会議に参加した時の提示資料や、
資産防衛シナリオ特別プロジェクト戦略指南書などの資料作りの際の参考に
なる書籍です。
それでは本日の赤ペンチェックを見てみましょう。
▼「82kg理論」に陥るな
私は最近太り気味で、体重がついに80kgを超え、82kgに達してしまった。
このままではまずい。そう思っているときに妻からこう声をかけられた。
「最近、太ったんじゃない?いま体重はどれぐらいあるの?」
できれば触れてほしくない話題に、思わず私は次のように答えてしまった。
「そうだね。まあ、80kgを超えたあたりかな」
この答えから透けて見えるのは、本質に目を向けない「逃げの姿勢」だ。
「80kgを超えたあたり」というのはウソではない。
だが、本当でもない。もし体重が80.2kg程度の数字であれば、妥当な表現
といえなくもない。だが、実際にはもう82kgなのであり、それはもう
「超えたあたり」を逸している。
にもかかわらず、「超えたあたり」とぼかしてしまったのは、私が真実を
見つめようとしていないからだ。実態を直視ぜず、現実から目をそらそう
とする私の「逃げの姿勢」が「80kgを超えたあたり」という答えに
如実に表れている。
世のビジネスシーンには、こうした「逃げの姿勢」が顕著な資料が氾濫
している。
ウソとはいい切れないが、決して本当ではない。実態を正しく反映して
いない曖昧さの残る資料。内容を把握するのに時間がかかる資料。
これらは、はっきりいって会社にとって罪悪でしかない。
▼売上には「色」がある。会社にとってプラスになる「色」と、見てくれは
悪くないが将来的には会社にとってマイナス要素となる「色」。
この2つの「色」を別々に見られる報告書を作成することである。
優れた資料を作ることは、度のあったメガネをかけるようなものだ。
あっていないメガネでは、実態がぼんやりとしか見えない。
間違った解釈をしてしまう危険もある。メガネによって、同じ数字なのに
見えてくる世界が違ってくるのだ。
▼重要なのは、自分の会社が目指す方向を知り、継続的な売上を作っていく
ことだ。固定的に入ってくる売上があれば、仮に会社に出勤するのが社員の
5分の1だけだとしても、その会社は問題なく回っていく。
その会社は間違いなく成長できる。残りの5分の4の社員は、新しい事業に専念し、
上積みに貢献できるからだ。
もし、みなが朝から晩まで走り回って一時的な売上に奔走していると、どこか
で破綻が訪れる。そんな無理な状態を維持できるはずがない。
ダメな会社の典型だ。
ソフトバンクがいまのような巨大企業に成長できたのは、常にプラットフォーム
事業を構築してきたからだ。Yahoo!BB、ヤフオク!。
どれも、一人ひとりの利用者から入ってくる金額はたかがしれている。
しかし、その金額は継続的に間違いなく入ってくる。
これがソフトバンクの強さの源泉であり、成長の根幹だ。
▼上を動かすには、数値化することも重要だ。
「こんなクレームが来ています」といっても、川上は動かない。何から手をつけて
いいかわからないし、そもそも重要性が理解できないからだ。
そうなると「仕方ないね」「今度から気をつけてね」という話で終わってしまう。
それでは何も解決しない。大事なのは、どんなクレームが何件入っているのかを
明確にし、もし10万コール来ているとしたら、例えば会社は1億円をムダにしている
といった具体的に経営的な意味づけをすることだ。
お金に換算して初めて川上は覚醒し、理解を始める。川下のコールセンターに流れて
きたゴミ(=会社の問題点)を川上にぶちまけ、解決を図るには、一にも二にも
数値化することである。
▼形としてはA4サイズ1枚に統一しよう。このサイズであれば、ひと目でパッと
内容をつかめる。議事録は早く目を通してもらうのが一番。読むのを後回しにしたく
なるサイズや分量では意味がない。
最近はトヨタが報告や提案、企画書をA3用紙1枚にまとめて仕事の改善を図って
いることから、A3サイズが脚光を浴びているが、私はA3よりも断然A4派だ。
鞄にいれるにしても、A3サイズだと折りたたまなければならない。
A3サイズの書類を使いたがる役所や会社は少なくないが、会議でいちいち閉じたり
開いたり折ったりしなければならないのは面倒くさい。
また、何よりも問題なのは、ひと目で何が書いてあるかがわからない点だ。
目線を左上から右上、左下のように移動させなければ、内容が理解できない。
頭の使い方や目の動かし方がA4よりも格段に難しくなるのだ。
それに引き換え、A4サイズなら横長にしても、縦長にしても、そこに書いてある
構造がそのまま目に飛び込んでくる。どこに何があるのか、自分のほしい情報を
見た瞬間に手に入れることができるのは、A4サイズならではのアドバンテージ
だろう。
A3はA4の倍以上の手間を要するように感じる。
また、会議議事録をメールで添付して送る会社が増えていることを考えると、
なおさらA4の方がお勧めだ。PDFで送付されたA3サイズの資料を開くと、画面上
では文字が非常に小さくなってしまう。いちいちカーソルを動かして文字を判読
しなければならないのは不便極まる。
▼事実と評価は分けて記そう
事実と評価をごっちゃにしないこと。
これも、会議議事録において非常重要な点である。
▼議事録に、感情的な要素が入る余地はゼロだと心しよう。
個人の感想などを下手に入れてしまうと、議事録がとたんに情緒的になり、
プロジェクトマネジメント的なスタンスから遠ざかる。
起きたこと、決まったことを淡々と記せばそれでいい。
次のときまでにやっておかなければならないことについては、「いつまでにいくらの
コストでこういうモノを作る」というプロジェクトマネジメントの作法にならって、
はっきりとさせよう。次回の会議までに、誰がどんなものをいつまでに提出する
のかを議事録に明記するのである。
このとき、必ず体言止めにすることも強調しておきたい。
図表を見ると、「ユーザー調査報告」「納期10月20日」とあるが、もしこれを
「ユーザー調査をする」という表現に替えるとどうなるか。
「ユーザー調査は実施するが、報告まではしなくていいのかもしれない」という
解釈も可能となり、次回の会議の席で「ユーザー調査は実施しました。いま資料
を精査中です」となるかもしれない。「ユーザー調査の報告」まで期待していた
他のメンバーはあてがはずれ、日程が後ろにずれこんでしまう。
そんな事態も考えられる。
サラリーマンとは、自分のいいように解釈をして、甘えてしまう傾向がなきにしも
あらずの人種である。それを防ぐためにも、表現は体言止めとし、アウトプット
を明確に定義することを心がけよう。
▼責任者や納期、アウトプットを明確に決めよう
責任者と納期についても、必ず明確に決めておきたい。
▼定義づけの大切さを示す意味で、蝶と蛾の話を紹介したい。
日本では、蝶と蛾は別々の昆虫だとみなしている。しかし、蝶と蛾の区別なく、
両者を一括して「蝶」としている国があることをご存知だろうか。
答えは、フランスだ。フランスではも蛾も同じように「パピヨン」と呼ぶ。
蝶と蛾に異なった定義がないとうことは、蝶と蛾の区別がつかないということだ。
日本人は、昼間に活動し、羽を立てて止まり、幼虫がアオムシである昆虫を
「蝶」とみなし、それ以外は「蛾」だと考えているが、実は、この2つに生態上の
はっきりとした差があるわけではない。両者はどちらも同じ「鱗翅目」であり、
はっきりしと区別ができないものなのだ。
その意味では、蝶と蛾を同一視しているフランスは正しいわけだが、この話は、
フランスと日本のどちらが正しいかの事例ではない。
いったん物事をはっきり定義しておけば、その定義で私たちは認識し、行動
するようになるということだ。
みながこれは「蝶」、これは「蛾」だと思っていれば、物事はその定義で動く。
定義とは厳密なものである必要はない。誤差と認められる範囲であれば、それで
定義は成立する。
だから、仕事の上でも業務の定義、業務との区分けをしっかりと行いたい。
定義がなければ、みなで定義を決めること。
この作業は忘れずに実施しよう。
今日も社長業を楽しみましょう!