こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。
昨日、日経新聞にこんな記事が出ていました。
「会社員の副業促進を 諮問会議民間議員 人手不足で要請へ」
労働力不足の補てんのため、副業禁止を規定している企業の多くに対し、
副業のススメを行うとのこと。素晴らしい施策だと思います。
しかし、税務申告上は副業を悪用してはダメです!
4年前の所得税確定申告期間中に、こんな報道が大体的になされました。
「架空副業でサラリーマンの脱税指南、経営コンサルを逮捕
東京地検特捜部」
記事によれば、顧客のサラリーマンに副業をしているように装わせ、
所得税の不正還付を受けさせたとして、東京地検特捜部は所得税法違反の疑いで、
都内の経営コンサルタントを逮捕したとのこと。
逮捕容疑は、所得税が源泉徴収されているサラリーマンでも、
副業で赤字が出れば、所得税が還付される仕組みを悪用。
顧客のサラリーマン数十人と共謀。
平成22年7月から24年4月、架空の副業で赤字が出たとする確定申告書を提出。
所得税計2500万円を脱税。
こんな事件でした。
サラリーマンも源泉徴収された税金を取り戻したい。
サラリーマンが副業して、事業所得が生じ、それで赤字が出たなら、
税法上は還付を受けることができる。これ自体は全く問題ありません。
しかし、これを公然と認めて、サラリーマン層が皆やりだしたら、税務署も困ります。
税金徴収の問題だけでなく、源泉徴収制度自体の根幹が揺るがされます。
源泉徴収制度はいわば、会社がすべて税金計算を代行し、
徴収を簡素化する狙いもあるからです。
こんな手法を悪用されたら、課税当局サイドは、
「徴税事務も煩雑になるし、税収減にもつながる」
となるでしょう。
この事件の逮捕容疑を見ても…
サラリーマン数十人で、たったの2500万円の脱税。
1人当り70~80万円。東京地検が動くほどの大きな額とは言えません。
本来なら、この程度は任意の調査をし、
「ごめんなさい」
と謝らせて、何十万円かを返させて終わり。そんな事案であるはず。
しかし、執行猶予はついたものの、懲役1年8ケ月、罰金600万円の有罪判決。
これは国税庁が、
「制度の根幹に触れる手法なので、見せしめに痛い目に遭わせよう」
そんなふうに考えたに違いありません。
税制の根幹にかかわる悪質な行為には、たとえ金額は小さくても、
厳罰が処されます。
徴税システムの根幹に関わる部分に手を出すと、天罰が下る、
そんな事例ですね。
くれぐれも、副業を悪用して不正還付は受けてはダメですよ。
私たちも所得税確定申告期間の最終章に入りました。
スタッフの頑張りで前倒しで進めているため、心に余裕をもって、
高収益の開業医のクライアントの申告業務に臨んでいます。
今日も社長業を楽しみましょう。