こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。
私たち中小企業の経営者はリスクテイカーですね。
私が常日頃言っているのは「社長業=究極のハイリスク請負業」。
経営者は万一、会社を潰しても国から失業手当をもらえないばかりか、
個人財産全てを身ぐるみはがされてしまいます。
よって、リスクに関して正しい知識を持っておいた方がいいですね。
ただこの書籍でいうところのリスクは日本国での生活そのもの?
というわけで、本日の一冊はコチラ。
『リスクを取らないリスク』堀古英司(クロスメディア・パブリッシング)
それでは、本日の赤ペンチェックをみてみましょう。
▼相続税を100%近くに引き上げるべき、という声もよく聞かれます。
確かに資本主義社会で生きていくにあたって、まずスタートラインを公平にする
という点では有効な策かもしれません。しかし、これは資本主義の原点ともいう
べき、財産権の問題に関わってきます。
▼そもそも人間が努力し、リスクを取って経済成長に貢献した後のご褒美
(財産)は、それが保証されているものでなければなりません。泥棒によって
盗まれないよう、治安を保っておくことも重要ですが、最終的な泥棒が国と
いうのでは意味がありません。近年の中国を見ても顕著なように、財産権を
保証することによって経済は高い成長を遂げ、生活水準を大きく改善させる
ことができるのです。
▼またスタートラインを公平にするという目的であれば、目に見える資産
以外も対象にしなければなりません。例えば世襲議員は多くの場合、親が築い
た人間関係や支援者を引き継ぐことができます。その結果、選挙では一般の人
に比べて当選できる可能性は高くなるでしょう。相続税によってスタートライ
ンを公平にするというのであれば、例えばこのような目に見えない資産も計算
に入れるようなシステムが必要になるでしょう。逆に言えば、相続税を100%
にしたところでスタートラインを厳密に公平にできるわけでもなく、それで
あれば結局は、相続税をある程度の水準に設定しながら、経済成長に寄与する
動機も与える、という現在の状況がバランスの取れた落ち着きどころと考える
しかありません。
▼有効な「格差解消策」は、教育や職業訓練です。移民受け入れが難しいの
であれば、教育や職業訓練を通じて、高度な技術を持つ付加価値の高い労働力
を増やすことによって、それらが相対的に希少な状況を緩和しようというもの。
▼実際のところ、私はこれが最も有効な格差解消策と考えています。教育や
職業訓練によって、新たに高付加価値労働力が生まれれば、長期的には賃金の
上昇圧力が緩和されるばかりでなく、新しいビジネスや税収にもつながります。
格差の解消形態も上を落とすのではなく、下を突き上げる形になるので、経済
全体においてもプラスになります。
▼これに関連して重要なのは、英語の習得です。ハイテク革命に対応するもの
が高度な技術であれば、グローバル化に対応する一つの手段は英語だからです。
英語を瞬時に理解し、駆使してそのままビジネスに活かしていく、という能力
は、グローバル化が進展する中ではますます重要になってくいくと思います。
そして実際この20年ほどで、英語を使いこなる人とそうでない人の格差はすで
に広がっています。
▼日本の場合、現状というのは財政赤字が先進国の中で最悪であるということ
であり、そしてほぼ確実に起こるであろうことは、少子高齢化と人口減少が進行
するにもかかわらず、巨額の財政赤字と対峙しなければならない、ということは
ほぼ決まっています。
▼このような条件のもとでは、取るべき政策は非常に限られています。
すなわち、経済成長を最優先することによって財政赤字問題、高齢化に伴う年金
負担を乗り越えていくしかないのです。安倍政権でなくても、他の政権であって
も、他の選択肢はほとんどありません。
▼高い経済成長が実現できれば、それに伴う税収増加によって財政赤字を削減
できますし、年金不足も改善していきます。この結果、経済成長というコイン
の裏にある格差は拡大してしまうかもしれませんが、その副作用は甘受しなけれ
ばならない将来が待ち受けているでしょう。
▼アメリカと日本の高所得者上位1%の所得が国全体の所得に占める割合は、
アメリカが約20%であるのに対し、日本は9.5%にすぎません。つまり、日本は
アメリカに比べて格差が小さい国と見ることができます。
▼20世紀前半は日本でも、この割合が20%近くに上っている時期がありました。
この時期は今のようなセーフティーネットもありませんでしたから、実質的には
もっと大きな格差だったと見られます。しかし戦後はずっと10%を下回る状態が
続いています。ここにきて、10%に近付きつつありますが、それでも20世紀
前半に比べれば、半分以下の水準です。
すなわち、日本でも、20世紀前半に比べれば格差は小さいということです。
▼日本の今後の20~30年を考えた場合、かなり高い確率で格差が拡大していく
国になると予想されます。格差は問題といくら叫び続けても、少なくとも、
この先20~30年、政府は何もしてくれないし、そもそもできないのです。
上記のことは、私たち経営者が日本人として日本国でビジネスをしていく以上、
知っておくべき事実かも知れませんね。
今日も社長業を楽しみましょう。