こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。
今日から3月となりました。税理士業界の感覚で言えば、月が替わったという
より、所得税確定申告期間の折り返し地点であと2週間という感じです。
ただそんなときでも、目先ばかりにとらわれないように長期視点は忘れぬように
したいもの。一方、家庭の方では子供たちが思春期に入ることもあり、親子の距
離感が難しくなってきました…(汗)
そこで、今日の一冊はコチラ。
『ビジネスパーソンの父が子供たちに伝えたい「21世紀の生き方」』
酒井穣(ディスカバリートウエンティワン)
それでは、本日の赤ペンチェックをみてみましょう。
▼ 人の問題をマクロにとらえるための小宮山モデル
元東大総長の小宮山宏氏によれば、人類の問題は以下の3つに集約されるとの
こと。
①有限の地球
いま現在も、人類は発展しているように見えるかもしれない。実際に、会計的に
は地球は利益を出しています。つまり各種のコストよりも、企業や社会が生み出
す価値の方が大きいように見えているということ。
しかし実は、このコスト計算には、地球が様々な天然資源を生産するためのコス
トが反映されていない。例えば、漁師が魚を獲るときの人件費はコストとして計
算されていますが、自然が魚を育むコストは計算に入っていない。
仮にこうした、地球が様々な天然資源を生産するためのコストを会計的に反映
させたとすると、人類社会の収支はすでにずっと前から赤字になっているという
指摘がいま、世界的な注目を集めている。
原子力安全基盤機構によれば、省エネルギーに優れている日本人並みの生活でも、
エネルギー21億人、食料で50億人までが限界のようです。
②高齢化する社会
人類はいま現在、多産多死の時代から、少産少死の時代への巨大な人口シフトを
経験しています。このシフトの最中、エアポケット的に地球上の大多数の人が、
ビジネスを含めた生産活動に従事することができる生産年齢(15~64歳)になる
時期があり、これを「人口ボーナス」と呼びます。
人口ボーナスが起こっている時は、多くの人が報酬(給料など)をもらいます。
そして「来月も収入がある」という安心感が、私たちの消費を支えています。
ですから、この「人口ボーナス」が起こっている間は、経済が活性化するわけです。
ですが、この状態はまさに「ボーナス」という言葉に表現されているとおり、一時的
なものにすぎません。
③爆発する知識
インターネットを流れる情報量は、2001年から2009年までの8年間で、何と71倍に
激増しています。しかし、実際にユーザーに受け入れられて消費された情報量は、
同じ8年間という期間で、わずか2.5倍程度にしか拡大していません。
これからさらにセンサー技術が発達し、センサーが生み出す膨大な情報は、「爆発
する知識」をさらに爆発させていくことになります。私たちには、こうして増え続け
る情報をどのように整理・理解し、どう活用するのかが問われているわけです。
▼権力の背景となる価値の源泉は、情報から問題を解決できる力に移行している。
そもそも人類は、権力を求めて競争する生き物です。そこには無視できない人類の
負の面があると言わざるを得ません。しかし、権力自体には問題があったとしても、
その源泉になるものが、土地・生産設備や情報の独占から、本質的な問題解決に移行
することは、人類にとって喜ばしいことだと思います。
▼こういった本質的な問題を解決するにはあたっては、会計的な「コスト削減」という
とらえ方ではなく「消費地球量の削減」や「労働力の有効活用」というとらえ方をしな
ければなりません。
▼「消費地球量の削減」の場合であれば、化石燃料の消費量を削減するという視点から、
人類の「物理的な移動」を削減するという視点に移行していく必要があるでしょう。
ここに対しては、インターネットがフルに活用されます。
▼「労働力の有効活用」の場合であれば、お金を持っている高齢者に何かを売って
儲けるといった視点にとらわれすぎないことが重要です。人類の人口分布のボリューム
ゾーンが生産年齢から高齢者に移り、さらに日本であれば人口も減る中で、どう生産性
を高めていくのかという問題の方が本質的です。
▼生産年齢人口が減ることで国の税収が減り、高齢者が増えることで各種社会福祉のため
の国の出費は増えていきます。この過程では、当然、社会福祉は悪化し、多くの高齢者が
年金だけでは暮らしていけなくなるでしょう。
▼受験をどう考えるか
受験勉強以外にも、子供が頑張れることは無数にあるとは思います。
しかし、広い意味で知力がものを言う社会において、受験勉強を捨てる場合は、
それ相応の覚悟が必要です。現実として、学校での勉強も含めれば、1日平均
10時間以上の勉強を、自分の意思で、それこそ年単位で続けるということを
こなす子供たちがいるわけです。子供からその経験を奪ってしまうのは、あまり
に危険だと思います。
▼なるほど、受験にはテクニックが必要です。そしてテクニックは、学問の本質
ではないのかもしれません。しかし、そうしたステレオタイプな意見も、落ちこ
ぼれが東大を目指すという漫画「ドラゴン桜」を読めば、変わると思います。
「ドラゴン桜」が深いところで訴えているのは、勉強とはすなわち生きるという
ことであり、真剣に受験勉強に取り組むことは、人格の形成につながるというこ
とです。
▼受験勉強をどこまで自発的に頑張れたかは、その先の人生で、その子供が目の
前にある物事にどこまで頑張れるかを決めてしまいます。努力の結果として、志望
校に合格できるとは限りません。それは努力が足りなかったか、受験勉強に向いて
いなかったというだけの話です。
▼その先の人生では、受験勉強とは違った勉強が求められることになります。
そのとき、受験勉強を頑張った人材は「あのときよりは、ずっと楽だな」とか、
「あのときは、努力の仕方がよくなかったので今回はこうやろう」といった認識
であたれます。こうした「あのとき」の価値は、計り知れないと思うのです。
厳しい時代に生き残るためのヒント満載の書籍で、学びになりました。
息子に受験勉強を頑張らせる意義もよく理解できました。
今日も社長業を楽しみましょう。